週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第162回 ポジティブ心理資本
「ポジティブ心理資本」という言葉をネットで見つけた。「プレジデント」誌が先々週(3月14日)に配信したインタビュー記事で、筆者(というか話者)は東京大学の中原淳准教授。
さて「ポジティブ心理資本」とは何かだが、記事にはこうある。〈どんな苦難に際しても、選択肢をいくつか考え、物事を前向きに捉える――。現在、こうした姿勢そのものがいよいよ「資本」として機能する時代になってしまったといえるでしょう。これを専門用語では「ポジティブ心理資本」と呼びます〉。
中原先生は〈いま、何をすればいいのかについて、会社も上司も正解を知らない〉〈にもかかわらず、あなた自身が、答えのない環境において、何をなすかを問われ〉る時代なのだと言う。
僕は経済学というものを勉強したことがない。だから、経済のことはよくわからない。かつてアテナの社長をしていた時期もあったが、自分の撮りたい作品を撮っていただけなので、経営をしていたのかといえば、おそらくしていなかっただろう。でも、そんな僕でも、経済に影響を与えるのは「人間の意識」じゃないのかとずっと思っていた。
人間の意識といっても、マーケティングの話ではない。つまり、購買心理とか、売れる仕組みの話ではなく、経済の理論や処方箋には「人間が感情の動物だ」ということが抜け落ちているように感じてきたのだ。もっとも、僕が知らないだけで、人間の意識を理論の中軸に置いた学者もいたのかもしれないが、主流ではないからか、その声は聞こえてこなかった。
「ポジティブ心理資本」の記事に、こんな件(くだり)がある。〈つくった「地図」を歩いてみたら、そこに描かれていない別の道に美味しそうな木の実を見つけた。そうしたら、そちらへ歩いていくことを柔軟に判断すればいいのです〉。
これはマニュアルを捨てたとき、あるいは「かくあるべき」という縛りから解放されたときに、何かが起きるということではないだろうか。もっと言えば、そういうふうにしか起きないものだと僕は思う。自分の意識のステージが上がれば、ぜんぜん違うものが見えてくるのだから。
また、こんな件もある。〈枠にとらわれず経験や人脈をつくり、成長機会を求める――そうした前向きな姿勢が閉塞感を突破する武器になるのです〉
これは従来の会社組織という「ピラミッド型」に固執すれば、もはや右往左往するしかなく、これからは一人ひとりが「多次元的な円」として自立していくしかないということだろう。
この記事自体は当たり前のことを言っているようで、とりわけ新たな発見があるわけではないけれど、でも、こういう見方をする人がどんどん出てくるといいなぁと思う。中原先生が言うように「これが正しい」とこれまで信じられてきたものは崩れ去り、すでに機能しなくなっているのだから。
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2012-03-30(00:00) :
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第161回 なぜ人はわかり合えないのか?
「幸せな家庭は同じ顔をしているが、不幸な家庭の顔はそれぞれ違う」という言葉がある。たしかに不幸をもたらす原因は、仕事、金銭、病気、不和……とあげれば切りがないけれど、つまるところ、その根っこにあるのは「人とわかり合えない」ことじゃないかと思うときがある。
先日
「愛と性の相談室」
にやってきたのは、すでに離婚を視野に入れた女性だった。「父親との関係をちゃんと築けなかった」「男性に父親のような存在を求めてしまう」とメールにある。僕が彼女から聞いたのはこんな話だ。
彼女が子どものころ、父親は自分の会社を倒産させたりして、しょっちゅう家を飛び出し、ゆくえ知れず。ある日、父親から電話がかかってくる。受話器から聞こえてくる声は、家にいたころとは様子が違っていた。子どもながらに、これがお父さんと話す最後になるかもしれないと思った。「お父さん、帰ってきて!」。ふつうの子だったら、そう言っただろう。でも、彼女には言えなかった。本当は言いたかったのに。
彼女の中には、なぜお父さんを引き留められなかったのかという思いがずっと残った。聞けば、心の問題を家族同士が話すような家庭ではなかったみたいだ。あるとき、母親に「なんでお父さんは帰ってこないの?」と訊いてみた。「じゃあ、お父さんに訊いてみれば」が答えだった。物心ついたころから母親は仕事で留守がち。父親は不在。姉が1人いたが、ほとんど友達と出かけていて帰宅するのは夜遅く。家族がバラバラで、彼女はいつも独りぼっちだったのだ。
そんな両親はやがて離婚する。その後、父親が再婚したと聞く。だが、彼女も大人になっていたから「今度会うときは、お父さんの葬儀のときだ」という覚悟はできていたらしい。
その父の訃報が届いたとき、彼女は夫と2人で地方都市に向かった。とっくに覚悟はできていたはずなのに、いざ父の死に顔を見たとたん、感情が込み上げてきて号泣した。再婚した向こうの奥さんも、きっとびっくりしていたはずだと彼女は言う。でも、自分でも気持ちを抑えることができなかったのだと。
父を葬(おく)って家に帰ってくるのだが、向こうでも帰宅してからも、夫からはやさしい言葉のひとつもなかったという。夫にとっては義理の、しかもとうに縁が切れたも同然の父親ではあるが、号泣する妻の姿を目の当たりにして、うまく関係を結べなかったからこその、その思いを、なぜ汲み取ってやることができなかったのだろう。たとえ「寂しいね」の一言でもあれば、彼女は救われたのかもしれない。
僕は話を聞きながら「そういうことの積み重ねだよね」と言った。即座に彼女は「そうなんですよ」と答えた。父親の葬儀の件は一例にすぎず、こういう類(たぐい)のことがたくさんあって、もう彼女は心も体も夫を受け付けなくなっているのだろう。
この話を読んで「彼女の気持ちがよくわかる」と思った女性は多いだろう。また男性は男性で、「わかろうとしないのは、お互いさまじゃないの?」と思ったかもしれない。かくも人は、なぜわかり合えないのだろうか。
かつてこのブログでも、人は「思考ベース」「感情ベース」「本能ベース」のいずれかに分かれると書いた。相談に来た彼女は「感情ベース」だろう。ダンナさんは、彼女の話から察するに「本能ベース」のように思える。このように相手とタイプが異なれば、人はわかり合うのが難しくなる。
たとえば、プロ野球の観戦に行ったとしよう。「思考ベース」の人間は「あそこで高めのストレートはないだろう」とか「5回満塁で続投させたのが、采配のミス」とか言う。とかく分析が好きなのだ。「感情ベース」の人間は声の限りに応援し、結果、タイムリーでも出ようものなら狂喜乱舞で盛り上がる。「本能ベース」の人間はプロの見せる神業的ともいえる技能に血をたぎらせる。まぁ、あくまでも例だが、僕が言いたいのは、同じ試合を観戦しながら、ベースが違えばぜんぜん違うものを見ているということだ。
人間関係もこれと同様で、わかり合えること自体が不思議なくらいである。とはいえ、だから仕方がないと片づけるわけにもいかない。では、ベースの違う相手を選んでしまった場合、どうすればいいのだろうか。
相談に来た彼女に僕はこう言った。「わかってもらおうと思うことを一回やめな。わかってもらおうとするんじゃなくて、あなたの意識のステージを上げるんだよ」。これはどういうことかと言うと、今のステージでは、前述のプロ野球観戦のように夫婦がお互い違う視点に立っている。しかし、意識のステージが上がると、それらを鳥瞰(ちょうかん)する視座が生まれる。つまり、相手が見ている風景も見えてくるのだ。すると、相手の考えていることを、自分のことのように感じる回路が開く。
たとえば「あ、これはこの人の中の子どもの部分が、こんなスネ方をしてるんだ」と見えてくる。態度や口には出さなくとも、本音のところでは、ダンナさんが彼女に気づいてほしかった部分でもある。これまでだったら、ダンナさんのほうも彼女の反発を予想しているはずだが、見えてしまった彼女の態度は違ったものになる。ダンナさんは「やっと思いが通じた」と思うことだろう。
意識のステージが上がっていないと「向こうが間違ってるのに、なんで私が」と思ってしまうが、ステージが上がれば相手の気持ちに自然と寄り添えるようになる。そうなって初めて、人はわかり合えるのではないかと僕は思うのである。
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2012-03-23(00:00) :
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第160回 ありがとう
ロフトのイベントで話したことだが、原発事故の議事録がないなんて、あいた口がふさがらない。福島第一原発の事故、その対応の中心となったのが、政府の「原子力災害対策本部」。この対策本部は、当時、菅総理が本部長、海江田経済産業相が副本部長を務める、いわば事故対策の最高決定機関。たとえば水素爆発があったとか、それを住民はじめ国民にどう告知するのかとか、避難方法とか、今後の原子炉の危険性や放射能分布予測は……といったことが話し合われたはずである。
ところが、公文書管理法で定められているにもかかわらず、「その記録は取っていませんでした」と。理由は「事故発生後の緊急事態とはいえ、(手続きが)整えられてなかった」そうである。つまり「急だったんで、それどころじゃありませんでした」と。小学生だって、もうちょっとマシな言い訳をするだろう。実際、ボイスレコーダーがその場に1台もなかったなんて考えられないと、あるジャーナリストは指摘している。仮に公式のレコーダーを忘れたとしても、出席する官僚たちはのちのち自分がマズイ立場に立たないように必ずボイスレコーダーで記録を残す習性があるのだそうだ。
しかもこの事実は、公共放送であるNHKが今年1月24日になって報道した。各マスメディアはそのあと右へならえで、僕の知るかぎり追及らしい追及もしていない。日本の記者クラブは「報道」機関というよりも、政府の「広報」機関だと世界のジャーナリストたちからは見られている。たしかに骨のある記者は記者クラブから外されている。
本当は議事録を取り忘れたんじゃなくて、ないことにしなきゃいけなかった「理由」があるんだろう、というのが、ほとんどの人の感じ方だと思うのだが、どうだろう。ただ、事実はヤブの中なのだけど。
そんな思いが強くあったなかでの、第2回目のロフトイベントだった。まず女性の多さに驚いた。去年のイベントでも女性は多かったけれど、今回、女性の比率はさらに上がっている。面接軍団のファンということもあるだろうが、男性以上に女性は、地に足のついたところで現実を受けとめる傾向があると僕は思う。チャリティーイベントということで喜んで参加してくれた人も多かったはずだ。会場で会ったたくさんの女性たちから「こんなイベントをしてくれて、ありがとうございます」と声をかけられた。お礼を言わなければいけないのは、本当は僕のほうなのに……。
また、印象深かったのは「目を見て初めてイケました」と報告してくれた女性が2人いらっしゃったことだ。しかも、そのうち1人は「涙が止まりませんでした」とも言い添えられた。このブログでも繰り返し言いつづけてきたことだが、その言葉を信じて実行され、つながり溶け合う経験をされた人がいたという事実。たった2人ではあるけれど、限られた人数のなかでの2人は、けっして小さな数字ではないと思う。
「イケた」報告のみならず、こうしたイベントでは、ふだんはなかなか会えない、いろいろな方の生の声を直接聴けるのがうれしい。去年もそうだが、今回も、みんなあたたかな人たちだった。もはや無能な政府に期待はできないけれど、みんなが元気になれるようなイベントがまた開ければ、と思っている。
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第159回 笑顔が消えない女
前回に続いて「ザ・面接 VOL.125」に登場する女性の話である。今回は2番目に面接にやってくる20歳のソープ嬢。セックスになってなくて、みんなから顰蹙(ひんしゅく)を買った。中折れ委員会にタオルが入ることはままあったけれど、女性の顔にタオルが入ったのは「ザ・面接」始まって以来である。
事前面接したときも、彼女はゼロか百だろうなぁと僕は思った。プロデューサーから回ってきた資料には、彼女の言葉として「セックスのときは手を止めてはいけない」「その時間だけでも、世界で一番愛してあげる。それが極意」と書いてある。僕との事前面接でも「セックスで女がマグロではダメだと思う」「一方通行ではダメなんです」と言う。期待するではないか。
画の中でも彼女は「セックスが好きでソープ嬢になった」と言っている。隊長が「おカネかい?」と聞いたときに「まったくそれはない」と。オッパイが「肉感的やなぁ」と言えば、「いえ、Bカップです」と受け流しておいて「でも、心はFカップ」だと言う。
ところが、男優が股間を舐めているときも、彼女は見下ろしたり、頭をなでたり、最後まで笑顔は消えずに冷静でいる。挿入後もそれは変わらず、男優が中折れしないほうが不思議なくらいだった。
ずっと見ていた審査員のひとりが、ついに泣き出した。「ようこそ催淫(アブナイ)世界へ14」で撮った主婦である。その際、彼女はトランスの世界を経験しているので、他人の気持ちを感じ取るセンサーが働いていたのだろう。「奥さん、何が伝わってきた?」と僕が訊くと、「悲しい。感じてるのか、感じてないのかもわかんないし、男性が苦しそうで……」と答えた。
「一方通行ではダメなんです」と言っていた本人が、まさにその「一方通行」を体現してしまった。僕は以前撮った「お姉様淫女隊」シリーズのある作品を思い出していた。それは高学歴の男ばかりを淫女隊が“筆おろし”していくという内容だが、その中で慶應大学を出て商社に勤めている坊やは、きっちりマニュアルを持っていた。彼の姿と今回のソープ嬢がオーバーラップする。
彼女は心の問題を言っているが、結局のところマニュアルなのだ。「愛してあげる」とはこういうことなんだと頭の中で考え、男の頭をなでたり、「よしよし」と見下ろしているようにしか見えない。それはひょっとするとソープのマネージャーから教わったことかもしれない。「手を止めちゃいかない」「マグロになっちゃいけない」。でも、マニュアルに縛られているから、肝心の相手にはまったく気持ちが向いていない。
当然というべきか、彼女に対する審査の結果は惨憺(さんたん)たるものだった。ゼロをつけた審査員もいる。「素敵な笑顔だけど、その笑顔が崩れなかった」「自分が男ならやりたくないタイプ」など、ボロクソの審査を受けて、最後に彼女の感想を聞こうと僕はカメラを向けた。すると彼女はこう言った。「私はみなさんよりも、誰からも愛されてないですよ。だから、たぶん私が理解できないんだと思いました。私からしたら、すごくみなさんが羨ましい。誰か愛してくれる人がいるから」
彼女の言いたいことがわかるだろうか? たとえば「私は一生懸命やったのに、それが伝わらなかった」と言うのならわかる。だが、彼女の言ったことは、まるで審査結果と噛み合っていない。「みなさんが羨ましい」? 「誰か愛してくれる人がいるから」? 彼女は何の話をしているのだろう。だから僕は「意味がよくわかんないんだけど」と言うしかなかった。
編集の段階で、撮った映像を見返す。彼女の場面も何度も見返した。撮っているときには「立派なことを言ってるわりには……」と思ったし、彼女に対する失望やイライラがあったのも事実だが、冷静に見返してみると、異なる一面が見えた気がした。
彼女は幼児期、親のスキンシップによる安心感や信頼感みたいなものが作られていなかったのかもしれない。事前面接でも現場でも、その話を彼女から聞いたわけではない。今までそういう女の子にたくさん接してきたから感じる匂いみたいなものだ。
彼女は19歳のとき、痴漢されたくて、被害が最も多い路線とその時間帯をわざわざネットで調べ、痴漢されそうな服で繰り返し電車に乗ったと言っていた。でも、一度も痴漢には遭わなかった。なぜ、そうまでして痴漢に遭いたかったのだろう。何を求めていたのだろうか。
あの現場で「こういうことが愛なんだ」と自分が信じたものを、彼女は実践していた。彼女は彼女なりに、ひたすら一生懸命だったのだ。最後まで笑顔を絶やすまいとして……たとえそれが空回りであろうと。
彼女が最後に言った言葉。「私はみなさんよりも、誰からも愛されてないですよ。だから、たぶん私が理解できないんだと思いました。私からしたら、すごくみなさんが羨ましい。誰か愛してくれる人がいるから」。その言葉は、実は彼女の中ではしっかりつながっていたのだと僕はやっと気がついた。
誰ひとり味方する者もいない中で、彼女はいっぱいいっぱいだったに違いない。カメラを向けられ、虚勢すら感じさせる表情。そんな状況で吐き出された言葉は、これまで誰にも言えなかった彼女の本音ではなかったのか……。しかし本音を吐き出すときでさえ、彼女は笑みを浮かべている。そこに怒りの色はない。いつもなら意味不明なコメントはカットして次に行ってしまうけれど、今回、彼女の言葉をすべて残し、最後はその笑顔を長いストップモーションにして、BGMまでつけた。僕は現場で理解してやることができなかったけれど、彼女の心の叫びが見ている誰かに伝わればいいなぁと思いつつ……。
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第158回 セックスの中の女たちの言葉
このところ自分の撮った作品について語ることがなかったので、現在リリースされている最新作「ザ・面接 VOL.125 熱いのちょうだい就活熟女 AVだんだけ~ソープ嬢 美人通訳もよう来たな」について書いてみたい。
この「VOL.125」は片山とじったが抜けた回である。かつて平本が引退したあとの候補として、じったと優作の2人の名前があがっていたのだけれど、結果的にじったは「ザ・面接」に、優作は「ようこそ催淫(アブナイ)世界へ」に登場することとなった。そんな経緯もあって、今回は、まず優作、そして澤地も面接軍団から推薦があったので入ってもらうことにした。なお、もし一徹が今後出ないとなれば、この「VOL.125」が彼の「ザ・面接」最後の作品となる。
今回の印象としては、銀次と森林のセックスがズバ抜けていい。なぜいいのかといえば、だいいちに会話がある。そしてセックスに入ったとき、いっさいの雑念を感じないくらい相手に向き合っているのだ。
では、女性たちはどうだろう? 今回は、いい人とそうでもない人の両極に分かれたように思う。女性のなかで突出していたのは、最後に面接に来る44歳の就活熟女と審査員のなかのひとり。彼女たちに共通しているのは、やはりセックスのときに「言葉」があるということ。そして、凄いなぁと思ったのは、自分の言葉に自分がどんどん酔っていくということだ。
就活熟女がセックスしているときの言葉の一部を拾い出してみる。「ああ~、スゴクいい!」「ダメ、すぐイッちゃう、そこ」「あ~、そんなとこに舌入れちゃダメ。でも気持ちいい~」「もっとして、ああ~もっとして!」「またイッちゃう!」「まわりに人がいるのなんて、わかんなくなっちゃう」「こんな大きいの初めて」「ああ、大きくて、硬くて、スゴイ!」「奥まで入っちゃった」「体が熱い。オマンコも体も熱い~!」「いっぱい出して」「中にいっぱいちょうだーい!」「ああ~イッちゃった」「こんなスゴイの久しぶり」「ああ~ピクピクしちゃう~!」
一方、審査員のひとりの言葉も抜き出してみよう。「好きになっちゃうかも」「ああ、もっと濡れちゃうよ」「ああ、気持ちいいよ~」「乳首、勃っちゃう~」「濡れちゃう、オマンコ~」「見ないで恥ずかしい」「ああ、しあわせ」「中まで指入れたら感じちゃう」「ああ、腰、動いちゃう!」「お尻まで垂れちゃう!」「硬いオチンチン、いやらしいチンポ」「欲しくなっちゃう、入れてぇ!」「オマンコ、ヒクヒクしてるぅ」「ああ~当たるぅ」「もっと激しくして~!」「ああ、死んじゃう! 死んじゃう!」「私の中にぶちまけてぇ~~!」
僕はセックスに演技は必要だと思っている。もちろん最後まで演技のままでは、相手とつながれない。しかし、演技に自分が酔えば、それはもはや演技ではなくなってくるのだ。この2人の女性は、その域にまで達していた。
特に審査員の女の子のほうは24歳。44歳の就活熟女と比べたら20歳も年下だが、読んでおかわりのとおり、まったく負けていない。セックスが終わったあと、僕は彼女にカメラを向けて「あんな言葉、どこで覚えたの?」とつい訊いていた。「わかんない。勝手に出てきた」と彼女は答える。
僕は彼女との事前面接を思い出した。そういえば、彼女は小さい頃からずっと病院生活を強いられていたと言っていた。小児ぜんそくのために、小学校や中学校へは何年も通えなかったのだ。勉強は病院でしていたと言う。おそらく親が家庭教師をつけたのだろう。だが、そこに同級生たちはいない。小学生のころから彼女は〈大人の世界〉で生きてきたのだ。自然発生的に出てくる彼女の言葉が同年代の女の子と一味違って魅力的なのは、そんなところにも原因があるように僕には思えた。
先ほど「今回は、いい人とそうでもない人の両極に分かれたように思う」と書いたが、「そうでもない人」とは、2番目に面接にやってくる20歳のソープ嬢である。ところが、僕がこのブログでいちばん書きたいのは、実は彼女なのだ。なぜ彼女がダメだったのか。にもかかわらず、なぜ彼女について書きたいのかを次回紹介しようと思う。
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