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イヌもネコも今に生きている。
しかしニンゲンは過去を引きずる。
引きずるからONとOFFも
思うように切り替えられない。
ONのようなOFF。OFFのようなON。
そんなときにはまったく違う環境に
わが身を置いてみるのがいい。
僕にとってはヤップやサイパンが
疲れた心と体を修復してくれた。
けれども10年も通っていると
当初のワクワク感は薄れてくる。
そうしていつしか納得し卒業して
また別のものに夢中になる。
(*「週刊代々木忠」は年末年始のお休みをいただきます。
次に読んでいただけるのは1月16日になります)
12月18日(木)、全48タイトルに増えました!
オーガズムは「小さな死(la petite mort)」と表現されたりもするけれど、オーガズム体験者と臨死体験者にはいくつかの共通点がある。
現場でオーガズムを体験した女の子には「今どんな感じだったの?」と訊く。すると何人かからは「別の世界(違う世界)へ行っていた」という答えが返ってくる。「そこはどんな世界だったの?」と僕は質問を重ねる。
ここで最も多いのが「真っ白い世界だった」というものだ。白い世界にもいろいろある。たとえば一面の雪景色だって白い世界には違いない。すると、彼女たちのほとんどがこう言う。「白い光に包まれていた」と。
これは臨死体験のなかの「光体験」に似ている。死に臨んで光に包み込まれた人たちは、光から自分が受け入れられ、同時に守られていると感じるようだ。この光体験が深ければ深いほど、“気づき”の度合いも大きくなると言われている。
オーガズムでも“気づき”が起きる。19歳で好きな男の子どもを身ごもり、あげくに捨てられ、中絶した彼女は、撮影前「誰も人を信じられない。信じられるのは自分とお金しかない」と言っていた。オーガズムの直後に言ったのは「男って私。男の人も女の人も私。私だから一体になって当然なんです」。
彼女が落ち着いてからさらに詳しく訊くと、「この世の宇宙とか、この世じゃなくてもあの世でも、宇宙とか世界とかいろんなもの引っくるめて全部、私の子宮の中にあるものだって。だからそれを、自分なんだから自分を見守っていかなくちゃいけないなっていうのを、なんか伝えられたのか、自分で思ったのかわかんないんですけど、自分では何も考えてなかったのに、そういうのがポッと出てきて、出てきた途端に自分の心とか気持ちというのがブワーッてこう広がったような気がしたんですよ」。
また、別の子はオーガズム後の雑談で、「監督は姿かたちのあるものしか表現できない悲しさがある」なんて言い出した。そんなことを言うキャラじゃないし、言われたときには「意味よくわかんねえなぁ」と思ったけれど、今なら「内面をもっと表現しろ」って言ってたんだよなと思う。
そのほかにも「みんな生まれてきてる価値とか、存在してる意味とか、あるんだなぁって……。うれしいな、なんかうれしい」等々、あげればきりがない。そしてオーガズム以降、180度考え方が変わったり、別人のごとく魅力的に変貌を遂げた男優女優を目の当たりにしてきた。
なぜそんなことが起こるのか? 自分が「世界そのもの」と同化してしまったからではないかと僕は思う。「世界」とは「すべて」という意味である。それまでは自分の立ち位置から見える限られた風景がすべてだったとすれば、その自分がいなくなり、場そのものと同化してしまうわけだから、もう見えないものはない。客観的に相手のことも自分のこともわかるのである。というか、相手すらも自分の一部なのだ。そういう視座の変化を彼女たちの言葉に僕は感じる。
しかし、そこを科学的に解明したというニュースは聞いたことがない。セックスはまだまだ科学されていない。そういえば3カ月ほど前、NHKスペシャル「臨死体験 立花隆 思索ドキュメント 死ぬとき心はどうなるのか」という番組があった(2014年9月14日放送)。立花隆著『臨死体験』(文藝春秋)が書かれるきっかけとなったNHKスペシャル「臨死体験~人は死ぬ時 何を見るのか~」から20年以上が経過し、科学はどこまで臨死体験に迫ったのか興味があった。
今回の番組で最先端の脳科学として筆頭に紹介されたのは、アメリカのミシガン大学での実験である。世界で初の試みだというその実験がどういうものかというと、ネズミの脳に直接電極を入れ、薬物投与で心停止を起こす。そのとき脳の奥深い部分の脳波を詳細に調べたところ、微細な脳波が発見されたというのだ。これまで医学的には心停止を起こすと、数秒で脳への血流が止まり、脳活動は止まるとされてきたけれど、じつは微細な脳波が数十秒続いていたと。
これを見た人のなかには「心停止後も脳が活動しているのなら、臨死体験はやっぱり脳内現象なんじゃないか」と思った人もいたはずだ。僕はどうだったかといえば、この脳波が脳のどの部位から発生したものか知りたいと思った。だが、そこは説明されていない。唯一あったのは「脳の奥深い部分の脳波」というナレーション。では、奥深い部分とはいったいどこなのだろう?
人間の脳でいえば脳幹が最も奥深いが、ここは心臓の拍動や呼吸など、生命を維持するための活動がメインである。だからこそ生命脳とも呼ばれる。これに対して人間脳と呼ばれる大脳新皮質は、ものを考えたり感じたりできるけれど、脳のいちばん外側に位置している。ちなみにネズミの大脳新皮質は切手くらいの大きさと薄さだそうである。ならば、発見された脳波は少なくとも大脳新皮質からではないだろうという印象を持った。そして、もしも脳幹あたりから微細な脳波が数十秒間出ていたとしても、それが「体外離脱」や「人生回顧」や「大いなる気づき」を果たして起こさせるものだろうかと。
オーガズムも臨死体験も科学的に解明されるには、まだまだ時間がかかりそうである。けれども一方には、オーガズムや臨死を体験し、生き方そのものがポジティブに変わり、人の道標(みちしるべ)になったり、人を癒している人たちがいる。それは誰にも否定できない現実なのである。