週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第333回 セックスレスの大きな要因
新幹線が走り、オリンピックが開かれたころの話だから、もう50年以上前になる。僕はストリップの興行を任されていた。踊り子が日舞と洋舞を合わせて10~12人、幕間のコントを担当するコメディアンが3人、そしてバンドマンが3~4人。これがステージに上がる一座である。束ねているのは太夫元(たゆうもと)と呼ばれる人間だ。
こういうグループがいくつもあって、同時に全国あちこちを回っていた。僕はおのおののコースを切ったり、各興行先へ集金をしていたが、そこで顔を合わせた太夫元やその下の若い衆によく言ったものである。「おまえら、まんべんなく回ってるかい?」と。
太夫元はだいたい一座の看板の子とデキている。若い衆も別の子とデキている。では、それ以外の女たちはどうなるのか? 限られた狭い世界で1人が複数に手を出せば、チームワークを重んじる一座は成り立たなくなる。そこで、ほかの一座の太夫元や若い衆が、それ以外の女たちのために通ってくるのである。彼らも自分の所に女がいるわけだから、どの道かけもちには違いないのだが。
つまり視点を換えれば、自分の所の女だけ見ていればいいという話ではない。僕が言った「まんべんなく回ってるかい?」とは「ほかの一座の女の子たちもちゃんとフォローしてるのか」という意味である。
安い給料で使っているのもあって、男のいない女の子たちは隙があれば簡単に逃げてしまった。特に目を光らせておかなければいけないのが、将来看板になりそうな子だ。で、彼女たちをつなぎとめておくために男たちはがんばる。当時ストリップの一座というのはかなり管理された中で動いていたので、女の子たちは男日照りしていた。みんなセックスがしたい。彼女たちの性欲を満たすこと、それは太夫元や若い衆にとって重要な“仕事”なのだった。
ところが、ほとんど毎日その“仕事”をしている彼らからは似たような泣きがよく入った。「あの子、イカねえから疲れるし、つらいですよねぇ」と。そのような子にかぎって何度も要求するからだ。将来の看板を嘱望されるような子だから、顔もスタイルも当然悪くない。にもかかわらず、僕に泣きを入れるくらい彼らは「やりたくない」のである。
話は飛ぶが、「愛と性の相談室」でセックスレスにまつわる相談が少なからずある。女性のほうが「もうしたくない」という場合もあるけれど、「夫(あるいは彼)が抱こうとしない」というのも多い。僕は彼女たちに訊く。「あなた、イッてるの?」と。ほとんどの人が「イッてない」と答える。
女性がセックスでイクかどうかは、セックスレスの大きな要因だと僕は思っている。とはいえ、セックスレスの責任が一方的に女性の側にあると言いたいわけではない。なぜならば、イケない女性には共通して足りないものがあるからだ。それは絶対的な安心感というか、相手に自分を全部さらけ出せるという信頼感である。
なぜこの安心感や信頼感がないのかといえば、たとえば男を信じられなくなるような出来事が過去にあったケースもあれば、相手の男自体に問題があるケースもあるだろう。いずれにしても、セックスは2人でするものだから、どちらか1人ががんばってもどうなるものでもない。
逆に、女がイッてくれると、男はまたしたくなる。そして、なにより自信が湧いてくる。その自信はいろいろなところに反映されるだろう。仕事もしかり、生き方そのものもしかり。だから、やはり男は女をイカせなきゃダメなのだ。それは相手のためでもあり、自分のためでもあり、2人のためでもある。
2015-11-20(00:00) :
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