週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第153回 「好き」は自分の中にある?
「愛と性の相談室」で女性たちと話をしていて、感じることがある。編集で落としている部分もあるが、多くの女性に共通しているのは、いろいろ考え過ぎているということだ。本人にとって切実なのはよくわかるけれど、ともすれば一人相撲になる感も否めない。
たとえば、ある男性が言い寄ってきたとき、相談者のある女性は「こんな私のどこがいいんだろう?」と考えている。「彼はあなたに好意をもって来てるんだから、そのまま受け止めればいいんだよ」と僕が言えば「それはそうですよね」と答えるものの、話が進んでいって次のテーマになると「でも、私なんか……」とまた元に戻ってしまう。
これは監督面接で会う女の子たちも同様で、彼女たちは恋愛の悩みを友人に相談し、「そんな男はダメよ」とか「あなた、ダマされてるのよ」というアドバイスをもらって、結果的に別れてしまうというケースが多い。恋愛をテーマにした実用書やエッセイもたくさん出ているので、彼女たちはそういう本もよく読んでいる。
僕からすれば、知識や情報が多すぎて、それが逆に人と人との本当のつながりを邪魔しているように見える。言い寄ってきた相手のことを好きならば「うれしい。私も好きよ」でいいと思うのだが、現代人は思考し分析してしまう。そして、言葉の裏側までをも探ろうとする。
人がよろこんでいたり、悲しんでいたり、怒っていたりする写真を見ただけで、
ミラーニューロン
は反応するそうである。つまり、写真に写っている人物がよろこんでいるとすれば、見ている人の脳の中でもよろこびという感情が湧くのだ。
写真だけでそうなるのだから、目の前に生身の人間がいれば、その人が本当にあなたを好きなのか、あるいはそれが偽りなのかは、自分のミラーニューロンに聞いてみれば、他のどんな知識や情報よりも確かなのではないだろうか。
だから、知識や情報を持たない人は、ある意味、幸せかなと思う。頼ろうにもそれがなければ、自分で見ようとするからだ。たとえば、セックスのマニュアルに「クリトリスをさわれば女は感じる」と書いてあったとする。それを読んだ人はセックスのとき、当然それを試みるに違いない。ところが、それを知らなければ、手さぐりでどこが気持ちいいのかを探すことになる。探しているうちに、女性の表情なり反応で、自分のミラーニューロンも同じところが発火し、それを感じ取る。
ミラーニューロンが発見されてまだ15年くらいしか経たないけれど、その間にも現代人のミラーニューロンは退化しつつあるのではないかと、僕はちょっと心配になる。他者が、あるいは社会が発信するものに頼るがあまり、自分の直感を信じていない人が増えているからだ。筋肉だって使わなければどんどん衰えてしまうのだから、同じことがミラーニューロンにも言えるのではないか。
恋愛においても、考えるのをやめて正面から向き合ったとき、きっと相手の本質は見えてくるだろう。
最後にひとつ、ちょっとした提案がある。それは、自分の部屋の目につくところに、好きな人の笑顔の写真を飾っておくというものだ。むろん愛想笑いではなく、心からうれしそうに笑っている写真である。先ほども書いたが、ミラーニューロンは写真にも反応することが科学的に証明されている。好きな人が幸せな気分で写った写真を見れば、あなたも幸せな気分になるだろう。日に何度もそれを見れば、見るたびに幸せになる。すると、人生までも変えてしまうかもしれないと思うのだが、いかがだろうか。
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2012-01-27(00:00) :
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第152回 死後の世界はあるのか?
3カ月前、このブログで「見えない世界への憧憬」という話を書いたが、今回も「死後の世界」に関する話である。
「死後の世界があるか?ないか?」と人々に問えば、「絶対ある」「絶対ない」と答える人もいるだろうが、きっと全体からすればどちらも少数派で、大多数は「あるかもしれないし、ないかもしれない」という中間派、というか、どっちとも言えない派ではないだろうか。
僕は今、脳の本を読んでいるけれど、脳科学者の視点に立てば「死後の世界なんてあり得ない!」というのは当然の話で、すべては脳の中で説明がついてしまう。これはこれで説得力があるのだ。
「
女性のための愛と性の相談室
」の中の相談コーナーで「
つきあってはフラれる彼と、なぜ別れられないのでしょうか?
」という映像をご覧になった方もいるだろう。
相談者は10年以上、同じ彼とつきあってはフラれるをくり返している。それも彼の一方的な都合(たとえば新しい恋人ができたから)で別れを切り出され、彼女が別の人生を歩みはじめたと思えば、また「つきあおう」と誘われる。他人が聞いたら単なる身勝手男なのだが、でも彼女自身は、その彼が他のだれよりも自分に合うのを知っているから、別れられないし、忘れられない。
この相談には、早坂ありえさんというスピリチュアル・カウンセラーが登場する。早坂さんは、相談に来た彼女の前世が今回の生にどんな影響を与えているのかを語る。早坂さんの話はかなり具体的だ。
前世を信じるかどうかは、もちろん本人の自由であるけれど、相談者が別れられない彼との関係を、早坂さんの語る前世を通して見たとき、いろいろな現実と符合し、腑に落ちる様子がサイトにアップした映像からも伝わってくる。ある意味、抜き差しならないような状況に新たな糸口が見えてきたり、選択の幅が広がることで人生に余裕が出たり、客観的に自分を見つめられるようになったり……。
人間は死んでもまた生まれ変わるという考えを「転生」という。現実問題として信じているかどうかは別にして、「転生」という考えは世界中のどの文化にも普遍的に見られるようだ。死を宿命とする人間にとっての“救い”ということだろうか。
この生まれ変わりのうち、ある種の法則性というか、なんでもありではなく、生前の行ない(これをカルマという)によって、次の転生先や何に生まれ変わるのかが決まる(人間とは限らない)という考えが「輪廻」である。先の「転生」と併せて、「輪廻転生」とか「転生輪廻」と言われている。
「輪廻転生」という前提に立つと、僕たちは何回でも生まれ変わるものの、そこでは前世が現世に影響を及ぼし、現世をどう生きるかで来世が変わってくるということになる。うつのときでも僕が自殺しようと思わなかったのは、たとえ死に逃れても、どうせ来世で同じことが待っていると思っていたからだ。
「死後の世界なんてなくて、脳が死んだらお終いだよ」という人の人生と、「死後の世界はあるんだよ」という人の人生。この2つはまったく異なるものになるだろう。
前者は、死とともにすべてを失ってしまう。僕が3歳で母を亡くしているというのもあるだろうが、それはあまりにも切ない。そして、死が恐怖であるばかりか、死に際には生きている間に成し得なかったことへの後悔も残るかもしれない。
ところが後者は、肉体を失っても、また別の世界が待っている。死は怖い。でも僕にとっては、死の恐怖と同じくらいのワクワク感と救いがあるのだ。未知なる世界をのぞいてみたいという好奇心もあるし、万一やり残したことや積み残したことがあっても、まだ挽回のチャンスはある。そして、物心ついてからずっと会いたいと願いつづけた亡き母とも、その世界でなら会えるのだろうと思えば楽しくさえなるのである。
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第151回 一歩を踏み出せ!
年末にデスクのまわりを整理していたら、古い雑誌のコピーが出てきた。「現代」という雑誌でやった鼎談(ていだん)の記事である。メンバーは経済評論家の森永卓郎さん、作家の斎藤綾子さん、そして僕。1996年11月号とあるから、もう15年以上前になる。
「『終身結婚制で、男はかくも弱くなった』いまこそ愛と性の規制緩和を!」と題したその座談会は、「夜這い」の話から始まった。夜這いとは、セックスをするために夜中、他人の寝ているところを訪問する風習である。明治政府が禁止令を出すものの、村々に夜這いの風習は残り、それが完全に消えたのは1950年代と言われている。
つまり、かつて日本の「村」という共同体に一夫一婦制という概念は希薄だった。ただし、やりたい女を好き勝手に襲っていいかといえば、村には村掟(むらおきて)や村定めがあり、そのルールには従わなければならない。とはいえ、今の日本と比べればずいぶん性に対して大らかであり、若い男女に性の手ほどきをする大人たちが存在していた。
夜這いが消えた背景には、どんな時代の変化があったのか? 森永さんは、いくつかの大企業が1950年代に始めた「新生活運動」について語っている。要約するとこんな内容である。
〈ある企業は看護婦を雇って、従業員の家庭を戸別訪問させた。「子どもを二人にすると、こんなにいい生活ができますよ」と教えながら、コンドームを原価販売で配ったというのだ。なぜそんなことをしたのかというと、ひとつには旦那を朝から晩までガンガン働かせるには、家庭が平穏でないと困る。もうひとつは、戦後、家族手当ができて、当時は人件費の2割くらいを家族手当が占めていたから、子どもが増えると人件費が膨らんでしまう。
また、別の企業は給料袋に4コマ漫画を入れて社員に渡した。1コマ目に子だくさんの家庭が出てきて、子どもたちが騒いで、お母ちゃんは髪の毛くしゃくしゃでボロボロになって疲れている。次に、子ども二人の家庭が出てきて、こちらは対照的にお行儀のいい子どもで、実に幸せそうな家庭。それを髪の毛くしゃくしゃのお母ちゃんが見て「お宅はいいわね」で終わっているという〉
森永さんの話は、企業による産児制限であり、マインドコントロールだが、「仕事第一」の当時はそれをとりわけ不自然とも思わない風潮があったのだろう。実際、このあと日本は高度経済成長に突入してゆく。
その果てに日本はどうなったのか? 斎藤さんはこんな話をしている。
〈男のいない国というか、女と子どもの国になっちゃったと思いますね。男で生きようとしたら、すごくカッコ悪くなっちゃう時代になってる気がします。男ってこんなに素敵なものよねっていうイメージが、女の子にもわからなくなってますね〉
たとえば先述の夜這いの話を今読めば、倫理観や個人のプライバシーを問題視する人がいるかもしれない。だが、全国の市町村が均一化し、都会化してゆくなかで、個人の尊厳は本当に守られたのだろうか。僕には、国なり企業なりが自分たちの都合のいいようにアメとムチで洗脳していったようにしか思えない。
この座談会で、僕は〈最近は寝転がってセックスされるだけという“マグロ男”が増えている〉と言っている。すでに草食系化の兆しがあったということだ。知らないうちに入れられた洗脳からは自由にならなければならない。
新しい年を迎えた今、「もう一回、野性を取り戻そうよ!」「もっと本能を見直そうよ!」と言いたい。「リスク覚悟で一歩を踏み出せば、道は必ず拓ける!」と。
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