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第271回 MRI検査結果

 突発性難聴の話を2本続けて書いてから、もう7週間になる。聴神経腫瘍の検査結果をご報告する。というと、ずいぶん勿体つけてる感じだが、MRIで腫瘍は見つからなかった。右耳の聞こえ具合はといえば、完全に治った気がする。主治医も「数値的に見ても、本来の形に戻ってますね」と言う。

 じゃあ、めでたしめでたしじゃんと思われるだろうが、ちょっとだけ問題もある。最近、少し動くと息切れがするし、右の肩から胸にかけて吹き出物ができた。「先生、これってステロイドの副作用じゃないですか?」と主治医に尋ねた。主治医はすぐに呼吸内科と皮膚科の診察手続きを取り、そちらに行ってくれと言う。システマティックといえばシステマティックだが、他の科に押しつけてる感じがしないでもない。

 耳鼻咽喉科を出て長い廊下を歩き、最初、皮膚科に向かった。皮膚科の医師にも「吹き出物はステロイドの副作用でしょうか?」と訊いてみた。「免疫力が落ちてるから」という返事。副作用なのか? 副作用じゃないのか? でも文脈からすれば「ステロイドのせいで免疫力が落ち、免疫力が落ちたから吹き出物が出た」と取れる。結局、塗り薬を処方してくれただけだった。

 次に訪ねたのは呼吸内科。「息切れする」と言ったら、そのまま胸部X線撮影へ。きっと肺機能を疑ったんだろう。歳も歳だし……。肺の写真を見ながら呼吸内科の医師が説明する。ただし写真は2枚。1枚は今撮ったばかりのもの。もう1枚は7年前にこの病院で撮ったもの。それが残っているのは、さすが大病院だと思った。

 ところが、「今回、肺の下のほうに曇りが見られますが、これだけでははっきりしたことはわかりません」。で、日を改めて肺機能検査と胸部CTをやることになった。これじゃ、切りないよなぁ……と思う。耳が聞こえなくて耳鼻咽喉科を訪ね、それが治ったかと思えば、今度は皮膚科と呼吸内科だ。増えている。そして検査、検査。まるで病気を捜されてるような気分になる。

 家に帰って皮膚科で処方された塗り薬をよくよく見たら、配合成分に副腎皮質ホルモンとある。あん? この軟膏もステロイドか……。仮にステロイドの副作用で吹き出物が出たんだとして、それをステロイドで治すってのは医学的にはどうなんだろうか? でも痒いし、少量だったらいいかと思って塗ってみた。何度か塗るうちに痒みが治まり、皮膚はスーッと滑らかになってくる。確かによく効くのだ。

 息切れもそうだ。雨の日以外は朝のウォーキングを日課としているが、ステロイドを飲みはじめる前はふつうに歩いていた。ところが、飲んでいた15日間のうち何日かは気がつくと走っていた。点滴で入れるかどうかと言っていたくらいだから、かなり強力なものだったのかもしれない。それが服用をやめてから、ふつうに歩いているにもかかわらず、ときどき息切れがする……。

 うちの犬も糖尿病を患い、弱り切っているとき、動物病院でステロイド投与をすすめられた。つれていった娘は悩んだあげく、「もし先生がお飼いになってる犬だったら、先生はどうされますか?」と訊いた。「私は使います」という迷いのない声を聞いて、娘は「お願いします」と言ったそうである。愛犬はその後、目の手術を受けたけれど、体調そのものはステロイド投与でずいぶんよくなった。見違えるほど若返っている。

 愛犬の顔を見ながら「リバウンドがあったのは、オレだけかな?」と問いかけてみる。今は見えるようになった瞳で、犬が僕を見返す。返事はない。






Aito-sei-long

第270回 欲情の原風景

 前回は、男に義務のセックスをさせてしまう女性の話を書いた。今回はまずプロデューサー資料から、その女性の猥褻感の原点のようなものを箇条書きで引用してみる。

 〈小学校2年のとき、近くの神社で見つけたエロ本を見ていた。小学校4年のとき、家でお母さんのレディースコミックを大量に見つけ、こっそり見ていた。変な気分で自分のアソコを鏡に映して見ていた。その後、小学校6年まで、フィルムの入っていないカメラでアソコを撮ったりしていた〉

 彼女の“頭”から来る猥褻感は、なるほどこういうことから芽生え、育まれていったのかと思う。

 話は飛ぶが、最近「愛と性の相談室」の相談コーナーで会ったある女性が、応募の際に送ってくれた文章から一部分を抜粋してみる。

 〈私は幼稚園の時に、お昼寝の時間にちょっとエッチな男の子にディープキスをされました。そのときはディープキスなんて知らなかったですが、これがエッチなことなんだなってことはなんとなくわかりました。恥ずかしいけど、すごく気持ち良い。とろけそう。そんな感じがありました。あと、小学校2年生のときに幼馴染の男の子とお医者さんごっこをして、スカートの中をのぞかれたり、ちょっといじってもらったりしました。それも恥ずかしいけど楽しかったです〉

 ちなみにこの女性の悩みは、こういう幼少期のエッチな体験から、本当のセックスはさぞかし気持ちのいいものだろうと思っていたが、実際にしてみたらそうでもなかった。満たされたなと思うセックスはしたことがないし、イッたこともないというもの。

 だが、僕は彼女に会って話を聞き、「あなたは大丈夫だよ!」と太鼓判を押した。それについては後で書くが、この2人の女性の原点の違いについて、どう思われるだろうか?

 ビデオに出た女性は、幼い頃、エロ本やレディースコミックを見て欲情している。そして鏡にアソコを映したり、写真を撮る(まね)をしながら自分の中の猥褻感をかき立てている。

 一方、相談に来た女性は、実際に男の子からディープキスをされたり、スカートの中をのぞかれたり、いじられて欲情している。こちらは、生身の人間が相手だ。頭の中で作り出した妄想ではなく、行為自体が原点になっている。しかも、会って話を聞いていても、それらはイタズラされた忌まわしい過去ではなく、彼女にとってはいい思い出なのだ。

 オナニーとセックスの違いは、単に1人でするか2人でするかということではない。セックスの相手は電マやバイブの代わりではない。妄想で猥褻感をあおり、刺激で快感を得るのではオナニーと変わりない。生身の人間同士が性器のみならず、気持ちをも交わし合うのがセックスだ。

 相談に来た女性は、中学校に上がると男の子としゃべれなくなり、その裏には自分に対するコンプレックスもあったという。そういったネガティブな感情は今も多少引きずっているように見える。僕は彼女に自分を愛するための方法論を伝えた。

 自分がポジティブになることにより意識階梯が上がれば、同じ意識階梯の人との共鳴が起こる。つまり、自然とそういう相手にめぐり会うのだ。そうすれば、彼女の思い描いてきたセックスを体験することになる。

 だが、それができるのも、頭の中だけで欲情し妄想の虜(とりこ)になっていないからである。言い方を換えれば、人とつながる回路が閉ざされていないからこそ可能なのだ。
 現代はエロ本どころか、ネットを見れば妄想のタネはそこかしこに転がっている。小さな子どもがそれを見てしまうことも増えるだろう。欲情の原風景は“人”であってほしいと切に思う。






Aito-sei-long

第269回 夜のオツトメ

 「ザ・面接」に出た、ある女性の話である。四十路の熟女なら、いやらしい映像が撮れるだろうと、ついついこちらも期待する。彼女は2度離婚していた。

 最初の結婚では、夫がセックスしなくなったことが離婚理由だという。なので、同じ失敗をくり返すまいと彼女も次は気をつけた。再婚では、1週間に何度もしてくれる性欲旺盛な男を選んだのだそうだ。ところが、2度目の夫も日を追うごとに彼女を抱かなくなってゆく。

 これだけ聞くと「男が弱くなっている」という話かと取られるかもしれない。前々回書いた「男たちよ、欲情せよ!」って話と変わらないと。だが、男性諸氏は「だったら、いいや」と思わずに、もう少しおつきあい願いたい。

 彼女と事前面接で話したとき、オチンチンへの興味や体位への関心が伝わってきた。ああ、セックスが好きなんだなぁというのがよくわかる。つまり、いやらしいのだ。いやらしいのだけれど、ついぞ色っぽいなぁとは感じなかった。「セックスで目を見たことがない」と言う彼女に「目を見ないと男はしなくなるよ」と僕はレクチャーした。いつも以上に丁寧に。やることはやったから、あとは現場次第だ。

 撮影当日、控室で出番を待つ彼女の様子を見に行った。「どんな気分?」。彼女は僕を見ながら真剣な眼差しで「水を一杯ください」と言う。緊張してるのかもしれない。「のど渇いたの?」と訊く僕に、彼女はこう言った。「いえ、いっぱい飲んで潮を吹きたいんです」。僕の中で暗雲が垂れ込める。まぁ、なるようにしかならんか……。僕は助監督に水を持ってくるよう伝えた。

 現場が始まった。レクチャーはどこへやらで、彼女は相手の目を見ない。「男優さんの名前を呼んで、今だけでも好きになれ!」と言ってはみたが、性器の結合部をしきりに見ている。まぁいいやと思った僕は、それなら存分に見せてやろうと男優にマングリ返しを注文した。「見える! 見える!」と彼女は歓んでいる。

 それは正常位でしているときも同様で、下の入っているところを見ようとする。そのうえ、ファックしながらお尻のほうから手をまわし、結合部分をさわっているのだ。絵柄的にはいやらしいものの、見ていて伝わってくるものがない。僕は「これじゃ、男はしなくなるわ」と気づいたら口にしていた。

 彼女を見ていると“頭”が欲情したくて仕方がないという感じだ。辛辣な言い方をすれば、自分が猥褻感を感じるとこだけで遊んでいる。そして、それがセックスだと考えている。目の前の相手の思いを汲んだり、気持ちよさを共有してはいない。こうなると、男にとっては、もう義務である。しかも、別れた夫に彼女が求めたように、その要求は週何回やったところで満ち足りることはない。

 義務はトキメかないし、高揚しないし、相手を愛おしいとも思えない。射精はしても、疲れと空しさが残る。これでは男はしなくなるのだ。

 前々回紹介した「私はしたいけど、相手がしてくれない」という女たちの声。それに対して「男たちは何やってんだ!」と僕は書いたけれど、全部が全部、男のせいばかりじゃないなとあらためて思う。申し訳ない!

 そして同時に、今回の彼女は決してレアケースではないとも思うのだ。そこには、現代社会が抱える問題も見え隠れする。次回はそれについて書いてみたい。





Aito-sei-long

第268回 蘇える変態

 先月、一冊の本が送られてきた。『蘇える変態』。ずいぶん変わったタイトルだ。中を開くと、謹呈著者という紙片が挟んである。この本を書いた星野源さんから贈られたものだった。

 そこからさかのぼること数カ月、WOWOWのある番組での対談依頼が舞い込んだ。対談相手はアダルトビデオの名づけ親でもある水津宏さん。2人でAVの創成期からの話を自由にしてくれという。テーマが限定されてないと逆にやりづらいが、長いつきあいの水津さんとだったらいいか……と受けることにした。

 この時期に何故そういう対談が企画されたかというと、この番組自体は星野源さんの特別番組。星野さんは大手術をして、このほどカムバックされたそうなのだが、もともとAVが好きで、僕にも興味を持ってくれているという。なので、快気祝いがてら、星野さんには内緒で収録した対談を番組中に見せるという企画なのだ。

 このときまで僕は星野源さんを知らなかった。どういう人だろうと調べてみると、ミュージシャンで、俳優で、作家。なんと多才な。しかも33歳と若い。ファンもたくさんいるようだ。そんな人が僕に興味を持ってくれてるとは驚きであり、ありがたい話である。

 対談はサプライズだったから、結局、星野さんには会っていない。そこに届いた『蘇える変態』(マガジンハウス刊)。エッセイ集である。せっかくなので、じっくり読ませてもらった。

 僕が若い頃、有名な俳優や歌手の私生活はベールに包まれていた。今はアダルトビデオについて語る人もなかにはいる。いるけれど、『蘇える変態』を読んで、自分のオナニーや性癖について、ここまでフランクに書ける人がいるのかと驚いた。

 印象に残ったエピソードをひとつ紹介しよう。先ほど「大手術をして」と書いたが、動脈瘤再発で開頭手術を受けた星野さん。麻酔から覚めると、そこは集中治療室。声を出さずにはいられない、暴れたくなるほどの頭の痛み。

 やってきた可愛いナースに「痛み止め、打ってもらっていいですか」と頼むと、彼女は「座薬にしますね」と言い出す。僕も手術後、痛み止めの座薬を入れてもらったことがあるが、ビデオを撮っている僕でさえ、ナースに入れてもらうとなれば、やはり恥ずかしい。もちろん星野さんもそうだろう。

 ところが、彼が凄いのはここからだ。「こんな可愛い子にお尻を責められている」と妄想することで、激痛から逃れようとする。ここに来て、これは凄い。その発想は僕にはなかった。

 『蘇える変態』のあとがきに、先日、日本変態協会の会員になったとある。日本変態協会とは初めて聞いたが、会長がタモリさん、副会長が鶴瓶師匠なのだそうだ。だれしも変態の部分があると思う。よく「私はそんな女じゃない!」と言う子がいるけれど、そこを自分が認めてしまえば結果的に「そんな女」でなくなるという逆説が起こる。

 タモリさんにしても鶴瓶師匠しても、これだけ長い間、芸能界の第一線で活躍しながら、色恋沙汰のゴシップは一度として聞いたことがない。

 日本変態協会の会員になったと自ら公言する星野さん。オナニーの話も性癖の話も、有名になればふつうはいちばん気取りたいところである。星野さんのようにさらけ出せたら、もう怖いものはない。みんな、こうなれればラクなのになぁ……と思う。もしも会う機会があれば、彼とならすぐに打ち解けられそうな気がして、思わず僕はファンになってしまった。






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