週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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去る9月7日、2020年のオリンピック開催地が東京に決まった。イスタンブールやマドリードに分(ぶ)があるのでは……という不安を、見事最終プレゼンでくつがえしてみせた。
プレゼンはチームの勝利ではあるけれど、なかでも女性3人が素晴らしかった。とりわけアスリート・佐藤真海のスピーチに、僕は心を動かされた。テレビで見た人も多いはずだが、彼女のスピーチの主要部分(日本語訳)を引用してみる。
〈19歳のとき、私の人生が変わりました。私は陸上、水泳、チアリーダーもしていました。そして足首に痛みを感じ、数週間後には骨肉腫で足を失いました。もちろんつらかった。私は絶望していました。
でも大学に戻り、また陸上競技を始めました。目標を立てて、それを達成することが楽しくなりました。新たな自信が湧いてきたのです。そしてなにより私にとって大切なのは、自分が持っているものであり、失ったものではないということを学びました。
アテネと北京のパラリンピックに出場し、2012年のロンドンも楽しみにしていましたが、2011年3月11日、津波が私の故郷を襲いました。6日間、家族の安否が不明でした。家族が見つかったとき私は歓びましたが、私個人の歓びなど、国全体の深い悲しみとは比べものにもなりませんでした。
私たちは一緒になって、自信を取り戻してもらうためのスポーツ活動を主催しました。そこでスポーツの真の力を目の当たりにしました。新たな夢と笑顔をはぐくむ力。希望をもたらす力。人々を結びつける力。200人を超えるアスリートたちが、日本そして世界から、被災地に約1000回も足を運びながら、5万人以上の子どもたちをインスパイアしています。
私たちが目にしたのは、それまで日本では見られなかったオリンピックの価値がおよぼす力です。そして、日本が目の当たりにしたのは、これらの貴重な価値(卓越さ、友情、敬意)が、言葉以上の大きな力を持つということです〉
19歳の女性が膝から下を失うことの絶望とは、いかばかりかと思う。そんな彼女にスポーツは新たな自信を与え、大切なのは失くした足じゃないという気づきを起こさせる。被災地ではスポーツが、夢と笑顔をはぐくみ、希望をもたらし、人間同士を結びつけたのだと。
彼女のメッセージは、会場のIOC委員をはじめテレビの前の僕たちの心にしかと届いた。
メディアはオリンピックの経済効果をさかんに喧伝している。経済効果もあるにはあるだろうが、それ以上に大きいのは、やはり彼女が訴えたスポーツ効果のほうだろうと僕は思う。
経済は疲弊し、政治には失望してきた。それに加えて、観測記録を更新するほどの酷暑、豪雨、そして竜巻……。いつしか人々の心にも暗雲が垂れこめ、希望や目標の光が見えないムードが蔓延してはいなかっただろうか。それが今は、7年後に開かれるスポーツの祭典に心浮き立つものがある。
心理面ばかりではない。僕はこれまで監督面接で、撮影現場で、そしてこのブログでも、「体を動かせ!」「汗を流せ!」と言いつづけてきた。昔だったら、ことさらスポーツなどしなくても、生きる・食べるが体を動かすことに直結していた。
それがテクノロジーの進化によって、しんどいことや面倒なことは機械が代わりにしてくれるようになった。そのうえ今という時代は、頭脳や知識が優先され、体を動かさないことばかりが要求されているように見える。「じゃあ、幸せなのかい?」っていうと、肉体的にも精神的にも不健康な人が増えた。
オリンピックには世界の競技がそろっている。それらを見るにつけ、触発され、思い思いに自分のスポーツを始める人が増えるだろう。特に子どもたちにとってオリンピックは、憧れとともにひとつの目標となる。
今の高校生はもとより、中学生、小学生でも、7年後にはほとんどの競技へ出場可能な年齢に達している。学校内では部活の勧誘がしやすくなるだろうし、クラブチームへの参加も活性化することだろう。そうして、スポーツ人口の裾野は広がってゆく。
実際オリンピックやパラリンピックに出場し、ましてやメダルを手にできるのがごく一部の人たちだけだとしても、可能性はあなどれない。よしんばそこには至らなかったとしても、目に見えないさまざまな恩恵を、きっとスポーツはもたらしてくれるに違いない。佐藤真海が自らの体験をもとに語ってくれたように……。
9月26日(木)、全34タイトルに増えました!
2013-09-27(00:00) :
週刊代々木忠
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第233回 3つのオーガズム
前回のブログで「多くの女性がイキたいと思っている」と書いた。僕自身も長きにわたり「オーガズムとは何か」を追い求めてきた。このブログでも、オーガズムにまつわる話は少なくない。
女性たちと話をしているとき、あるいはメディアから取材を受けているとき、ひと口にオーガズムと言っても、人によってそのイメージはバラバラであることに気づく。それは大学の先生においても、なお同様である。たとえば一例をあげれば、イクとオーガズムは果たしてイコールなのか……。
今から20年以上前に上梓した『プラトニック・アニマル』は、いわばオーガズムに関する理論と方法の書だが、この中でオーガズムは特に区分されていない。だがのちに、僕はオーガズムを3つに分けてとらえたほうが、より正確に伝わるのではないかと思い直した。その3つを次に記すが、それぞれのオーガズムを記録した短い映像も添えるので、ぜひ見比べていただきたい。
(1)小さなオーガズム
これは“肉体的な快感”が頂点に達したときに我を忘れる状態である。この場合の多くは、肉体的な刺激をフィードバックさせて自己完結している。だから、セックスしている相手と心の交流がないのが特徴だ。オナニーでイクのも、オナニーのようなセックスでイクのも、それは小さなオーガズムと言えるだろう。クリトリス派といわれる女性の多くや、射精が最終的な快楽だと信じ込んでいる男性のほとんどがここに属する。
(2)中くらいのオーガズム
肉体的な快感よりも、むしろ好きな相手への“心のときめき”のほうにウエイトが置かれたセックスに多く見られる。肉体の快感の頂点と心と心の融合から起きる忘我の状態。心ゆえに感動をともない、「好き!」「愛してる!」といった思いが込み上げ、それが言葉となって現われる。また、このオーガズムを体験しているカップルのセックスは、目と目を見つめ合いながら愛し合っているのが特徴である。そして思わず涙が溢れてくることも多い。
(3)大きなオーガズム
心というプリズムを通さずにダイレクトに“魂同士が共鳴し合う”ことから訪れる至福の境地。このオーガズムを体験すると、気づきが起きて、人生観が一変し、それまでネガティブだった生き方もポジティブに変容する。小さなオーガズムが肉体の快感によって我を忘れ、中くらいのオーガズムが心の融合によって忘我の境地に至るのに対して、この大きなオーガズムでは、明け渡しによって自分そのものがいなくなる。一種のスピリチュアル体験である。
オーガズムを大中小に分けてみたが、厳密に言えば、僕が真のオーガズムと呼ぶのは3番目の「大きなオーガズム」だけである。とはいえ、この30数年間で延べ1000人近くの女性たちを撮ってきたけれど、大きなオーガズムを体験した人は10人にも満たない。
だから、大きなオーガズムを体験しなければ「そんなのはセックスじゃない」などとは、つゆほども思っていない。2番目の「中くらいのオーガズム」に至れば、人はセックスでこの上ない幸せを実感できる。それは僕が保証する。性の道を究めるつもりならいざ知らず、ふつうの人はそれで充分なはずである。
2013-09-20(00:00) :
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第232回 女性たちの悩み
「女性のための愛と性の相談室」の中に「誰にも聞けない悩み相談」というコーナーがあるが、現時点で次のような「相談」の数々がアップされている。
◆
体だけの関係が続く彼と将来はあるでしょうか?
◆
性器や乳首にふれずにイク方法を教えてください
◆
レイプのトラウマから自由になりたいんですが…
◆
つきあってはフラれる彼と、なぜ別れられないのでしょう?
◆
4年つきあっているのに、心の距離が縮まりません
◆
上司との不倫に悩んでいます
◆
私は解離性同一性障害です。夫とのセックスでイキたいのですが
◆
一回したら連絡が来なくなった彼…それ以来、恋愛ができません
◆
40代、50代の出会いはどこにあるのでしょう?
◆
このまま研究者の道を進むのか? 恋愛・結婚を経て家庭を作るのか?
◆
すなおに自分の感情が出せません
◆
人生にも恋愛にも“自立”したいのですが…
◆
もう夫を男として見られません。セックスも義務です
◆
家のこと母のことを考えると、自由に恋愛ができないんです
◆
自分に魅力がないので、恋愛ができません
◆
26歳の今まで男の人とつきあったことがありません
◆
悩みはセックスでイケないことです
◆
私はこの世に必要のない人間だと思うことがあります
◆
「しょせん風俗嬢だから」という目で見られてるんじゃないかと…
◆
ストーカーやレイプのトラウマで、恋愛に臆病です
◆
恋愛になると相手との関係をうまく築けません
◆
セックスでイケないからか、ダンナ以外の人に…
◆
いじめを受けたせいか人間不信で、本当の自分を見せられません
◆
夫の裏切りを許すには…?
◆
数年前から主人以外の不特定多数の男性と…
◆
どうしたら恋人ができるんでしょうか?
◆
7年つきあったセフレに情が移ってしまったのですが…
◆
中途半端な状態で、進むべき道が見えません
◆
望まない結婚をして今に至っています
◆
つきあって自分を出すと逃げられるんです
この相談サイトを始めるにあたって、僕は次のような文章を載せた。
〈ご本人にとっては切実な問題であり、相談を切り出すだけでも勇気がいる。その映像を不特定多数の人たちが見られる場に掲載すること自体、いかがなものかと考える方もいるかもしれない。恋愛もそうだが、性はそれにもまして人に聞けない悩みだから、他者の悩みを見る機会はほとんどない。しかし、相談風景を見ることによって、まったく同じ悩みではなくとも、そこに共通するヒントが見つかるかもしれない。仮に見つからなくても、悩んでいるのが自分だけじゃないと感じるだけで、何らかの風穴があくかもしれない。そうなれば、相談に来られた女性が、結果として別の女性を救うことになる〉
いろいろな相談がある。このうちのいずれかに自分と重なる悩みを見いだした方もいるはずだ。とはいえ、何カ月にもわたって視聴が最も多いのは「悩みはセックスでイケないことです」という相談である。裏を返せば、それだけ多くの女性が「イキたい」と思っているということだろう。
次回のブログでは「3つのオーガズム」について書いてみたい。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2013-09-13(00:00) :
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第231回 妻の異変
1日目。
夕方になって、女房の具合が急に悪くなった。体をよじるくらい肋骨のあたりが痛いと言う。顔面蒼白で、脂汗も流している。これは尋常じゃない。だが、あいにく土曜日で、きょうもあすも病院は休みだ。救急車を呼ぼうとしたが、行くのなら女房が糖尿病で通っている大学病院がいいだろうと思い直す。救急車だと、どこへ運ばれるかわからない。かかりつけの病院の救急へ電話を入れると、最低1時間から1時間半は待つことになるけれど、とりあえず診てくれると言う。
救急の窓口で状況を話すと、看護師さんが出てきて血圧を測った。232もある(ちなみに、成人の血圧の正常値は上が130未満と言われている)。すぐに奥へつれていかれて、正式に測ると240。造影剤を注入してCTで胸部をスキャンする。疑われたのは大動脈解離だった。けれども、CTの結果から大動脈解離ではないとわかる。ただし、それがわかっただけで、痛みと高血圧の原因はわからない。とりあえず血圧を下げる薬と痛み止めが投与されて、点滴を受けた。
深夜の2時ごろ、降圧剤のおかげで血圧は130台まで下がった。痛みのほうは来たときほどではないものの、まだ息をするのも痛く、その範囲は「肋骨だけでなく背中のほうまで広がった」と言う。どんなふうに痛むのか訊いても、女房は「表現のしようがない」と繰り返す。体の表面が痛いのか、中のほうが痛いのか、それも「わからない」と。
病院側は「血圧が下がったので、家に帰ってください」と言うが、「このまま帰っても、痛みは治まっていないし、入院させてほしい」と僕は頼んだ。しかし「病名が特定できないので入院はできない」と言う。「どの科が受け持つか決められないから」というのが理由のようだ。しかたがないので、その日は家につれ帰った。
2日目。
指示どおり降圧剤を飲んでいるのに、朝から血圧は240台に上がっている。午後まで辛抱していたが、夕方また痛みが激しくなり、とうとう救急車を呼んだ。来てくれた救急隊員にきのうからのいきさつを話し、「できたら同じ大学病院に運んでほしい」と言ったら承諾してくれた。救急車には下の娘が同乗し、僕はあとから自分のクルマで追いかけることにする。
ところが、救急での対応はきのうとまったく同じものだった。血液検査で炎症が起きていることはわかっても、それがどこなのか特定できない。すると娘がこんなことを言った。「帯状疱疹にかかったことがあるんですが、私は表に(発疹が)出ませんでした。母は私と同じ症状だから、帯状疱疹じゃないですか?」。問われた医者は「帯状疱疹だと皮膚科ですが、きょうは日曜なので皮膚科の先生はいません。循環器系の先生とちょっと相談してみます」と言って席を立った。
相談した結果は「その可能性はあるけれども、断定はできません」だった。僕は「その可能性があるのなら、それで入院の措置は取れませんか」と頼んでみた。このまま、また家につれ帰っても痛みは引いていないし、降圧剤の効きめが切れれば、血圧はきっと240台に戻るだろう。だが、医者の返事は「病名が特定できないと入院はできない」という同じ言葉の繰り返しだった。
3日目。
依然として痛みは引かない。降圧剤が切れると血圧が上がるのも同じである。娘とともに女房を同じ病院につれてゆく。これまでと同じ対応になるだろうことは想像がつくけれど、ほかに手がない。「病名が特定できないって、なぜですか!?」と娘が医者に訊いている。医者だったら何でもわかるだろうとは言わないが、なんの病気か医者が診断できなければ、いったい誰ができるんだよと思う。
すると、救急のきょうの担当医は「では、ほかの病院に行ってください」とこともなげに言う。「小さな病院だったら、病名が特定できなくても入院させてくれるところはあるでしょうから」と。僕がキレる前に、娘がキレた。この3日間インターネットでいろいろ調べてきたらしく、医者を追い込んでいる。追い込まれた医者は、「私たちもサラリーマンですから、決められたことしかできません」と平然と言ってのけた。私たちもサラリーマン? それを医者が言うのか……。
4日目。
この日は糖尿病科の主治医が出ている日だった。僕は仕事だったので、娘がつれていった。「帯状疱疹の疑いがあるけれど、断定ができない」と主治医に話したら、「あらためて血液検査をしてみましょう」ということになった。検査結果がわかるのは1週間後。結果自体はもっと早く出るようだが、主治医は週に2日しか出てこないから、最短で1週間後になる。
8日目。
1週間を待たずして、女房はまた強い痛みに襲われ、血圧が240を超えたので、救急につれていった。「主治医のほうが帯状疱疹に絞り込んだ血液検査をしているので」と言ったら、そのデータが目の前のパソコンに出てきた。正常な値は2以下だそうだが、女房の数値は22。10倍以上である。ということは、やはり帯状疱疹なのだろうか。やっと病名が特定できるかもしれない。そうなれば治療方法も見えてくるはずだ。
10日目。
同じ病院の皮膚科に娘がつれてゆく。飛び込みの初診ということもあり、5時間半待ってやっと診察。皮膚科の医者は血液検査の数値を見るなり、「過去に水疱瘡にかかっていると、なにもなくてもこの数値は出ます」とのこと。10日目にしてやっと病名まで辿りつけると思いきや、またふり出しに戻ってしまったような空しさである。
この10日間で救急に4回行った。そのたびに点滴を5時間半かけてやるので、僕もずいぶん長い時間そこにいたことになる。救急医療の大変さの一端は見たように思う。とくに小児科は大変である。相手は子どもだから泣き叫ぶ。それをなだめすかしながら、診察や検査を進めていく。相手が大人だったら、少なくともその苦労はないはずだ。そして、とにかく急患は次から次にやってくる。だから、いちいち情を移していたら、とても医者の身が持たないというのもよくわかる。
しかしである。患者の側からすれば、あまりにも事務的なのは否めない。ペナルティを負いたくないというのもひしひしと伝わってくる。なかなか病名を特定しないのも、もし違った場合の責任を考えて……というのを感じてしまうのだ。
何回か前のブログに矢作直樹先生の話を書いたが、先生が言っていたことを僕は思い出していた。それはまずタテ割り診療の弊害である。科が違えば医者といえどもまったくわからない。判断もしない。それを打開するためには、矢作先生の唱える総合診療医の育成が本当に必要なのだと思った。
もうひとつ、矢作先生の言葉として「『なぜ病気になったのか?』について、患者も医者ももっと考えなければいけない」というのがあった。なぜ女房はこうなったのだろう? 今回具合が悪くなる2週間ほど前から風邪気味だった。それでも庭いじりをしたり、買い物に行ったりしていた。僕は「休んだら?」とは言ってみたけれど、じっとしていられる質(たち)でないのはわかっているから、それ以上は言わなかった。
風邪というのは「免疫力が落ちたよ」というシグナルではなかっただろうか。免疫力が落ちたとき、もし持病があれば出てくるだろうし、ふだんは平気なウイルスや菌にもずっと感染しやすくなるはずだ。だから、もしもあのとき、もっと注意していれば、こうはならなかったかもしれない……。
このあいだ、北海道にいる上の娘と電話で話をしたとき、「お父さん、よしみを褒めてあげて!」と泣かれた。「私は北海道にいて、なにもできなかったから」と。よしみとは下の娘である。聞けば、娘たちはお互い母親の病気についてインターネットでいろいろ調べ、その情報をもとに毎晩遅くまで話し合っていたらしい。姉のほうは昔から最初に計画を立て、それをきちんと実行していくタイプだった。合理的で、無駄なことを嫌う。それにひきかえ妹は、僕に似て、出たとこ勝負の性格。だからいつも姉からは、やりこめられていた。
その姉が初めて「妹を褒めろ!」と泣きながら父親に訴えてきたのである。女房が病気になってからきょうまでの下の娘の献身ぶりが目に浮かんだ。上の娘にはそれがずっと見えていたのだと思った。そして親を思う娘たちの心を、あらためて見せつけられた思いだった。
21日目。
発病から3週間になる。あれから別の大学病院にもつれていったが、「これまでの検査データをすべてもらってきてください。でないと、うちで診るにしても一から全部やり直さないといけなくなるから」と言われた。最初にかかった病院のほうでは、まだ検査が続いている。血液検査もそうだが、測るたびに不整脈が出たり出なかったりするので、近々、検査入院して心電図を一昼夜とることになっている。
とはいえ、鎮痛剤が効いているのか、このところ強い痛みからは解放されている。身をよじるくらいの痛みに襲われる本人が、いちばん苦しいのは言うまでもないが、何もしてやれずにただ見守るだけの家族にとっても、それはつらいことだった。その痛みが遠のいている。鎮痛剤を飲んでもあれだけ痛がったことを思えば、病気は快方に向かっているようにも見える。ほとんど寝たきりだったのが、いまは起きて生活できるようになったのだから。
ただ、引きつづき降圧剤は飲んでいるものの、血圧は相変わらず240を超えるときもある。医者からは「血圧に関しては長い目で見て、治療していきましょう」と言われている。その病名は……いまだ特定されていない。
2013-09-06(00:00) :
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