週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第37回 恋愛には何が必要なのか?
「『ザ・面接』シリーズで審査員の女の子がセックスしてしまうのは、あらかじめ決められているのか?」といった質問をいただくことがある。観てくれている方にとっては、当然気になるところだろう。
現在、審査員の女の子は1作品につき6人出演しているが、プロデューサーは全員と会っている。その資料に目を通したうえで、興味を引いた何人かとだけ僕は会う(人数は回によって違う)。今回はみんな大人しそうだなと思えば、1人にだけ「もしやりたくなったら、セックスしちゃっていいよ」と言っておく。
こう書くと「なんだ、仕込みか」と思われるかもしれないが、事前に耳打ちした女の子はいざというときの"保険"であると同時に、実は他の、まったくなにも知らない審査員を現場でセックスへ駆り立てる"起爆剤"でもある。もちろん誰がどういう行動に出るのかは、そのときになってみないと僕にもわからないし、市原隊長をはじめ男優たちには誰が起爆剤なのかさえ教えていない。以上が僕の仕掛けである。
前回のブログで書いた「ザ・面接 VOL.110」で、僕が事前に会った審査員の1人は、フリーターの片桐ゆきな(19歳)だった。いま片桐に彼はいないが、セフレが3人いるという。彼女いわく「3人ともイマイチ」。オナニーは毎日。オナニーのときの想像は、3Pとか、押さえつけられて無理矢理っぽく。「ビデオでどんなことしたい?」と訊いたときにも、「手足を縛られて、言葉責めしてくれる人としたい」と言っている。
ここから見えてくるのは、自分は何もしないで、相手がしてくれるのをいつも期待している素顔だ。そのなかで、きっと自分が何か快感を得ているのだろう。
僕は「それじゃあ、男のいいようにされるばっかりだろう」と言った。「オレがその男の立場だったら、自分の排泄の道具として君を使っちゃうよ」と。Mなので縛って絶対服従という状況なら、男のほうは好き勝手にできる。そして僕は「でもそれだと、一生ずうっとそうだよ」と続けた。
すると片桐は「それはイヤだ!」とはっきり答えた。「だったら自分から行けよ!」と僕はたたみかけた。「それが今回の君のテーマだ」と。
撮影現場で3人目の女の子、前澤有実が終わり、意思表示のなさに僕が説教していたとき、それは起こった。審査員の片桐ゆきなが、イケメンの一徹のところにさっと向かったのだ。男優も審査員も全員がいっせいに声をあげた。
なぜこの行動がみんなの意表を突いたかというと、今回の出演者のなかでいちばん若い子が自分から動いたというのもあるけれど、実はこのときまで平本がずっと彼女にちょっかいを出していた。たいがいのケースで、ことはそのまま進行する。女の子が拒否することもなくはないが、自ら相手を代えるということはまずない。
ところが、19歳の片桐は平本を振り切り、部屋の隅っこに座っていた一徹のところに行き、向き合う恰好で膝の上に跨がってしまう。一徹は激しく戸惑っている。面接軍団に入ってから、自分はおろか先輩男優に対しても、こういう逆ナンは想像すらしなかっただろう。僕は「向こうでオレが説教しているのに、おまえら!」と口では言いつつ、心の中では「よぉーし、よくぞやった!」と叫んでいた。
一徹に愛撫されている片桐に「タイプだったのか?」と僕が訊くと、「はい」とうなずく。「感じてるの?」「うれしいのか?」と訊けば、腹をひくつかせながら「気持ちいい!」「うれしー!」と言った。こうして2人のセックスは始まった。それを取り巻く男優も審査員も「彼女の恋愛指数がいちばん高い!」ということで意見が一致した。
僕から見ても、自分の感情に素直になり、主体的に相手と向き合い、メインの3人のだれもがなし得なかった「あなたが好きだ」を言葉と表情と肉体で表現した片桐は、「イマイチなセフレ」とのSMから抜け出し、これからは本当の恋愛ができるかもしれないと思えたのである。
と、ここで終われば一件落着なのだが、現場では予期せぬことがつねに起こる。審査員の1人に、ショットバーを経営する澤見れみ(35歳)がいた。彼女の資料はプロデューサーからもらっていたけれど、僕は事前に会ってもいない。ところが、この澤見が最後にとった行動は、僕や男優たちの度肝を抜くことになる。
澤見れみは一徹を狙っていた。片桐と一徹がむつみ合っているところへ、彼女は移動する。そしてすかさず一徹を攻めはじめた。一徹が受け身にまわる。最初のうちは奪りっこになるものの、片桐は結局「え、Mなのぉ?」と冷めてしまう。べつに一徹がMなのではない。一定レベル以上の男優は、女の子が攻め、男の気持ちいい顔が見たいと思えば、それを真正面から受けられるということである。
澤見れみが終始主導権を握ったまま、一徹をリードしてゆく。その動きにはいっさいの無駄がなく、見せる技は芸術的に美しい。正直言って、僕も久しぶりに撮らされたという感じだ。一徹を平らげたあと、彼女は「ザ・面接」初出演の二村からも一滴残らず搾り取る。
彼女のセックスはかくも凄いのだが、そこには一点の感情も垣間見られなかったことを書いておかなければならない。
たとえばそれが顕著に表われているのが、彼女の「可愛い!」という言葉である。彼女より年下でイケメンの一徹としているときに、彼女は「可愛い!」を連発する。しかし、ただの一度も一徹を見て言うことはない。「濡れちゃう!」も「気持ちいい!」も、一徹の目を見ないばかりか、顔自体、違う方向に向いている。これは相手に届けたい思いではなく、自分で言って自分に聞かせたい言葉だからだ。彼女は自分の発した言葉によって、さらに興奮の度を高めてゆく。
また2人目の二村とした際、フィニッシュは二村が彼女の下でイカされるのだが、二村の上半身が彼女に近づこうと起き上がりかけたとき、彼女の上半身は後ろに倒れるように離れていく。気持ちの入っている子は、正常位でも女の子の顔と胸が男のほうに必ず上がってくる。それに対して、気持ちの入っていない子は、顎を上げ、上半身をのけ反らせる。澤見れみも、二村と下半身ではつながっていたけれど、気持ちはまったく溶け合っていなかった。
若い一徹も、初出演の二村も、彼女にとってはリードしやすい相手だったことだろう。銀次は何度も彼女にモーションをかけるが、ことごとく拒否される。彼がタイプじゃないというのもあるのだろうが、銀ちゃんはガッと相手の目を見て内面に入ろうとするタイプだ。だから、彼女が拒否した理由の中には、成熟した男とは向き合えないというのもあったのではないかと僕は思う。
どんなに見栄えのするセックスだったとしても、相手の気持ちとつながらなければ、所詮は自己完結であり、オナニーにすぎない。そして、そこから恋愛は決して始まらないのだ。
カメラを止めた後だったので絵には残っていないが、みんなが澤見と二村の芸術的なセックスに対して賞賛とねぎらいの拍手を贈っているなか、森林がボソッとつぶやく声が聞こえてきた。「なにも伝わってこねぇよ」。ああ、森はさすがだなぁと僕は思った。
イクときに後ろに倒れ込む澤見れみ
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第36回 恋愛できない女たち
きょうリリースされる「ザ・面接 VOL.110」の中で、面接を受ける3人の女の子は、どの子も恋愛に自信をなくしているというか、恋愛ができない子たちだった。
事前面接でそれを感じた僕は、本番の面接審査に「瞬間恋愛指数」という新たなチェック項目を設けることにした。これまでの「感度」「変態度」「エッチ度」「テクニック度」「パフォーマンス度」というセックス評価に加え、瞬間とはいえ恋愛度にもポイントを置こうと思ったのだ。
面接軍団の男優たちには「恋愛に対する自信を取り戻させるためにも、オスとして女を奪い合い、彼女たちの恋愛指数を上げよ!」というミッションを与えた。いいセックスを見せるだけではダメで、恋愛感情にも火をつけろという注文を出したわけである。
さてさて、恋愛できない3人の女の子たちは、「ザ・面接」の現場で、果たしてどのように変化したのだろうか? プロフィールから現場での様子まで、1人ずつ見ていくことにしよう。
最初にやってきたのは、テーマパークに勤務している篠宮香穂(20歳)。彼女は初体験が15歳。これまでの体験人数が12人。現在は彼が1人。彼とのセックスは週に3回。「彼がいるなら恋愛できているじゃん」と思われる人もいるだろうが、続けて読んでいただきたい。
彼女のセックスは、1回にだいたい3時間。目隠しをされ、手を縛られて、彼から言葉なぶりを受けている。毎回、Mなのだ。そして彼以外にもセフレが1人いる。彼女いわく「セックスではイケていると思う」。
事前面接でその話を聞いた僕は、思わず「それはセックスじゃないよ」と言わずにはいられなかった。依存排他であり概念思考に縛られているセックスを見ても、3つ(本能・感情・思考)のオクターヴは全部
「H96」
だと思われた。「本当のセックスというのは、目を見つめ合ってお互いの感情が溶け合うというか、目を見ながら相手の感性とつながるんだよ」と僕は彼女に話した。
撮影現場にて、この篠宮香穂を面接するのは、佐川銀次と鈴木一徹のペア。銀次のほうが先輩だから、最初、強引に彼女を自分のものにしようとする。若い一徹もなんとか食らいつくものの、銀ちゃんに蹴落とされたりして、最後までチャンスがない。
銀ちゃんは篠宮の目をちゃんと見て、彼女の中にある心の窓を探そうとしていた。ところが、入り込んでいこうとはするのだが、彼女は受け入れない。気持ちいいんだけれど、その快感をどう表現していいのかわからない様子だ。戸惑っているのが、こちらにも伝わってくる。
僕はファインダーをのぞきながら、「気持ちいいかい?」って何度も訊いてみた。でも「気持ちいい」の一言が出てこない。だから、つい声を荒げてしまった僕は、そのとき「なんでこの子はこんなふうになっちゃうんだろう?」とある意味、途方に暮れていた。
感情がどこかで拗(す)ねているように見える。プライベートでは毎回、目隠しされて縛られて、言葉なぶりを受けているから、彼女にとってのセックスは服従なのだ。服従隷属の関係では、M自らが「気持ちいい」と自由に言える立場にはない。1回のセックスに3時間というのもちょっと異常なら、週3回つまり1日置きにSMをくり返しているのも異常である。
ちなみに、彼女の出演動機は「ノリで出ている」ということだった。セックスが終わって、審査に入ったとき、審査員の1人がこんなことを言った。「彼女は若い人が好きって言ってたから、最後は若い男優さんのほうが行くと思ってました。だから、ちょっとがっかり」と。それに対して「今の審査員の方のフォローに涙が出そうになりました」とつぶやく。この言葉も直接表現を迂回しているけれど、文脈からは「若い男優さんとしたかった」という意味になる。他者からの指摘がきっかけとなり、彼女は現場でこのとき初めて自分の気持ちを口にしたのではないだろうか。もうすべてが終わったあとではあったけれど。
若くてイケメンの一徹としたいのなら、銀次と一徹が彼女を奪い合っているときに、ただ一言そう言えばよかったのだ。銀ちゃんに気をつかって言えなかったというふうには見えない。僕から見えるのは、主体性がなく、その場に流されてしまう彼女の姿だった。
だからビデオに出たのも、プロダクションにスカウトされて、言われるままに来たのだろう。それが彼女の言う「ノリ」ではないかと僕は思った。そしてその後の現場も、ずっとこの「ノリ」の延長線上に成り立っていたのではないかと。
男2人が争い、体を張って自分を奪い合ってくれているわけだから、本当ならばうれしいはずだ。そうすれば、少しは女の子も自分を取り戻し、自信を持ってくれるんじゃないかなと思い、そういうシチュエーションを設定した。だが篠宮香穂は、残念ながら最後まで変わらなかったのである。
2人目の山口のぞみ(31歳)はキャバクラ嬢。初体験は19歳のときで、これまでの体験人数が20人くらい。現在、彼はいない。ただし、セフレが2人いるという。
この子に限らず、今は彼とセフレを使い分けている女の子がとても多いが、このへんが僕にはよくわからない。「彼がいない、けれどセフレが2人」ということは、セックスにおいて感情を出していないということではないだろうか。「キャバクラ嬢という仕事柄、感情の封印傾向が見られる」と僕は事前面接でメモしていた。
この山口のぞみも、「人のいない青空の下で」とか「3P」とか「鏡に映され、見せつけられて、辱めを受けたい」とか「言葉責め」を期待している。だから僕は、山口にも「目を見て、ちゃんと向き合わなきゃセックスにならないよ」という話を事前にしていた。
しかし、彼女も現場では、照れもあるのかもしれないが、どうも相手の目が見られない。さらには、男優2人がオチンチンを差し出すと、こっちを取ったりあっちを取ったり、要するにどっちつかずなのである。そんな彼女は、1人目の子と同様に、自分がないように僕には思えた。
もっとも、山口は最後に何かをつかんだなという感じもあった。セックスが全部終わって、審査員の論評を一通り聞き終えたとき、僕は彼女にけっこう強い口調で言い放った。「恋愛できてないよなぁ。自分、出してないもん。恋愛せえ。恋愛して早く子どもを産めよ。キャバクラで客だましてばっかいないで」と。すると、彼女の目には涙があふれてきた。
ウソ泣きは別にして、涙が出るというのは心を開いている証(あかし)である。逆に笑いは、実は緊張時における自己防衛のケースが多い。腹の底からのバカ笑いは別だが、撮影現場で女の子たちが笑うのは、ほとんどが本当の自分を隠すためである。山口の場合は、きっとお店でその方法をしっかりと身につけているに違いない。その彼女が泣いた。これは緊張状態が解け、閉じ込めていた感情が少しだけ表に出てきたということだろう。
3人目の前澤有実(30歳)はOL。初体験は19歳。体験人数は7人。これは3人のなかではいちばん少ない。現在、彼はナシ。セフレもいない。オナニーは週5回くらい。オナニーの際の想像は「監禁されて、縛られて、オモチャでいたぶられて、セックス」だと言う。ビデオに出て何をしたいのかは「Mなので強引にされたい」。
彼女は一貫して主張はするけれども、やっぱり欲求するだけだ。「もっと、もっと」なのである。僕は現場を見ていて終わったあとに「森くんの疲労だけが残ったな」と思わず口にしていた。「森くん」というのは、前澤にあい対した男優・森林のことである。男優というのは、グーッと向かって行って、相手の返りがないと、すごく疲れる。それを森くんに、僕はとても感じていた。
これは今回の出演者3人全員に共通している。気持ちよさをどう表現したらいいのか、わからないというのが。現場では、きっと今までにない快感があったはずだ。でも、最後まで自分から意思表示をしない。これでは、恋愛はできないのである。
ここまで読んでいただいて、「2人目の山口のぞみの最後の変化を除けば、恋愛のできない女の子に自信を取り戻させるという目論みは、ことごとく失敗に終わったんだ」と思われることだろう。
だが、「ザ・面接」において男優たちと交わるのは、面接にやってくる3人だけではない。実はダークホースとも言える女の子が、審査員のなかにいた。そして、その子とは別に、かつてない衝撃を僕に与えた女の子も......。それは次回お話ししようと思う。
面接軍団は女たちの恋愛指数を上げられるのか?
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