週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第98回 理想社会と面接軍団?
面接軍団の市原隊長と藩金蓮さんがやっている「ザ・面接BLOG」や関連の Twitter を読んでいると、これほどまでに一徹は女性ファンが多いのかと驚く。「ザ・面接」のこの回とこの回は一徹がタンポンを食べさせられているという情報まで書き込まれている。女性ファンとしては、一徹のタンポン食いなど見たくはないからだろう。
このタンポン食いにしても、肛門様のドリル舐めにしても、いちおう断っておくけど、監督である僕が考え出したことではない。自然発生的に男優たちが見せ場を作ろうとして始め、あげく自分たちが墓穴を掘ってしまっている。タンポン食いはたまたま生理の女性にあたったアニキこと平本が始めたものだが、今は面接軍団の新入りへの洗礼というか通過儀礼になっている。
食ってこそ面接軍団
むかしの村社会には、いろいろな通過儀礼が存在していた。それを経験して初めて一人前と認められるような。そういうものは僕の中にも懐かしさとして残っているけれど、きっと面接軍団の中にもあるのだろう。「ザ・面接」の初期はレイプっぽい行為から女を暴いていくのが作風だったが、それは徐々に変化してゆく。でも、男優たちはレギュラーメンバーなので、いつしか村社会的なコミュニティーというか共同体ができあがった
肛門様のドリル舐め
共同体ができれば、その中からみんなを束ねる人間も出てくる。また、中にはどうにもならない者がいたりもするが、でもそんな人間にもちゃんと居場所があるのが、村社会のいいところなのだ。たとえば、アダルトビデオにおいて男優の中折れなどは、本来なら絶対に見せたくない場面である。しかし「ザ・面接」では排除するどころか、"中折れ委員会"まで誕生し、逆にそれが見せ場をつくっている。
中折れ委員会の会員(左)と委員長(右)
僕も「ザ・面接」でなければ、中折れする男優を使いつづけたりはしないだろう。「女の殻を打ち砕け!」というミッションでは、とてもじゃないが信頼して任せられない。女の中に入っていって、開いて、もっと入っていくというのができないわけだから。
中折れ委員会も隅のソファではなぜか元気!?
中折れに限らず、「ザ・面接」においては何かヘマをしでかすと、他のメンバーからコケにされたり、ど突かれたりするんだけれど、でも、やられているほうも、案外心地よかったりする。なぜなら、完全に切り捨てられるわけではないから。他人事としてシカトされるのに比べたら、どれほど救いであることか。
敗者へのドリル舐め。どのくらい凄いかというと...
...しばらく動けないくらい
そればかりか、ドジやヘマは上手くやり遂げた他のメンバーを活かし、際立たせることに一役も二役もかっている。失態は隊長にしても、実は絶好のツッコミどころであり、おいしい存在なのだ。
このように、ジャイアンツじゃないけど、強打者ばかりを揃えたのでは、面接軍団は成り立たない。きっと118回もシリーズが続いてはいなかっただろう。いろんな個性があり、イケメンもいれば、肛門様もいる、信頼にあつい一人前もいれば、まだまだ成長の余地がある未熟者もいる。でも、そもそも社会ってそういうものではないのか?
にもかかわらず、現実の社会はといえば、いま優秀な者だけが生き残り、それ以外は淘汰されてしまう。企業なり集団が要求する条件を満たす者だけが選ばれ、そうじゃない者は弾かれていくのだ。ひとつの基準に合わなければ居場所もないような世界が住みやすいはずはないだろう。
だから、住みやすい社会の構築にあたっては、ぜひ面接軍団を参考にしていただきたい! 冗談です、半分は。
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2010-11-26(14:49) :
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第97回 娘とのイタリア
今回、下の娘と一緒に行ったのは、これまで一度もふたりで旅行したことがなかったからだ。もし結婚でもすれば、そういう機会はもうやってこないだろう。
来月で29歳になる娘とこれほどしっかり手を握り合ったのは初めてだった。飛行機が揺れると「お父さん、手を握ってて」と言われ、揺れている間はそうしていた。映画祭でレッドカーペットを歩くときには、僕のほうから「手をつないで歩こう」と自然に言えた。それはなんとも不思議な感じである。
しいて形容するなら、うれしさと解放感か......。でも何からの解放なのだろう。娘ふたりには平等に接してきたつもりだが、実はずっと抱いていた下の娘への負い目のようなものかもしれない。以前も書いたが、下の娘が生まれた途端、妻は赤ん坊べったりになり、僕は上の娘のフォローにまわった。それ以来、上は父親、下は母親というペアができ、そのまま今まで来た。思い出をたぐり寄せれば、しっかり者の上が主導権を握り、下はいつも姉に譲ってきたようにも思える......。今回、華やかな檜舞台であるレッドカーペットをその下の娘と手をつないで歩いたことが、僕にとっては別な意味でも幸せだったのである。
往きのフランクフルト空港にて
映画祭自体、イベントや取材が盛りだくさんだったけれど、それ以外にもローマではいろいろなことがあった。1日目、まずホテルに着いて驚いた。シングルルームにシングルベッドが2つ置いてある。苦労してやっと押し込んだという風情である。ピッタリくっつけた2つのベッドの両脇には、やっと通れるくらいのスペースしかない。だからスーツケースも開いては置けない。こんな具合だから、ソファなどは望むべくもない。ベッド以外にあるものといえば、コーナーに冷蔵庫があり、その上にブラウン管のテレビが置いてあるだけだ。バスルームをのぞくと、シャワーのみでバスタブは見当たらない。
でも、このホテルが4つ星である。事前に聞いていたので、かなり期待していたんだけど......。「私の部屋のほうがまだ広いよ」と娘がため息をつく。ホテル自体はたしかに綺麗だが、外から見ると以前はコンドミニアムとして使われていたみたいだ。大きな建物の半分が今はホテルになっており、ホテルの部分だけ塗装をやり直したのが見て取れる。
「4日間もここにいるの?」と娘。部屋での居場所はベッドの上しかない。「これじゃあ、なにもできないよね」と僕。すると「私、交渉に行ってくる」と娘は部屋を出ていった。結果、少しだけ部屋がよくなった。移った先はどうやら3人部屋のようで、真ん中にダブルベッドが、その足元にはシングルベッドが置かれている。今度は、ダブルベッドの左側にスーツケースを広げるスペースもある。交渉の戦果として娘にダブルを与え、僕はシングルで寝ることにした。
2日目は、映画祭のID申請を済ませ、その後、娘に気をつかってくれたプロデューサーの朱さんの計らいでバチカンに行った。バチカンからの帰り、「せっかくイタリアに来たんだから、本場のピザを食べよう」ということになった。大きな看板に「PIZZA」と大書されたオープンカフェ風の店がある。さっそく朱さんがウェイターに注文を伝えると、奥からおばちゃんが出てきて「うちにはピザはない」と言う。「じゃあ、なんでピザの看板が出てるの?」。さんざん揉めたあげく、結局スパゲティでお茶を濁した。あの看板はいったい何だったのか?
店から出ると、フランスから来た大勢の学生たちに取り囲まれた。といっても、囲まれたのは僕ではなく娘である。みんな15歳くらいだと言うから、修学旅行でやってきた中学生なのだろうか。彼らからキャッキャ言われて、娘は女の子たちと一緒に写真に納まっている。どうやら日本人が珍しいようだ。娘は手に入れたばかりの映画祭用IDを首からさげており、そこには大きく「PROFESSIONAL」と書かれていたから、ひょっとしたらそれも影響したのかもしれない。ちなみに石岡監督のIDも「PROFESSIONAL」。なぜか僕だけが「TALENT」だった。
その夜は、レッドカーペットを娘と手をつなぎ歩いて、上映会のホールへ。続く3日目は、取材に当てられていた。当然ながら、今回の映画を見るまで僕のことを知っているイタリア人はいない。でもイタリアに行ったら、せめて一枚くらいは自分のサインを残してこようと思っていた。だから、日本から持ってきた落款(らっかん)を娘に預けていたのだ。
映画を見た人からも、メディアからも、幸運なことに僕はサインを求められた。娘がバッグから落款と朱肉を出す。僕はサインしたのち、落款を押す。その間、みんな不思議そうな顔で見ているのだが、押して渡すと、とても喜んでくれた。
イタリアで出来た僕の彼女
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ではなくて、ホントはこんな写真
4日目の午前中、時間が空いた。あいにくの雨だが、「トレヴィの泉だけは行かせて」と娘が言う。石岡監督や朱さんと一緒にトレヴィに向かう途中、レストランに寄る。今度はピザのない「PIZZA」屋ではない。ミネストローネが評判だというが、なるほど美味い。食後にみんなコーヒーやデザートを注文する。僕と石岡監督はエスプレッソを頼んだ。エスプレッソがなぜか1つだけ来て「誰が頼んだのか?」と訊いてくる。石岡監督も僕もお互いが「どうぞお先に」って感じで譲り合う。ウェイターのおじさんはソーサーにのせたエスプレッソカップを、僕の前に置こうとしたり、石岡監督の前に置こうとしたり、そしてやがてそのエスプレッソはガチャーンと石岡監督の上着に......。と思ったらジョークで、ソーサーもカップも紐でつながっており、もちろんエスプレッソは入っていない。日本だったら初めて入ったレストランで、こんなサービス(?)はまずしない。これもラテンの国ゆえだろう。
5日目はもう帰国。とにかく予定がびっしり詰まった旅だった。とても楽しかったし、行ってよかったなぁと心から思う。娘と一緒に過ごせたことも、僕にはかけがえのない思い出だ。でも、娘はどうだろう? 行く時点でレポーター役をしてもらうことは言ってあったけれど、まさかこんなに自由時間がないのは、きっと誤算だったに違いない。行ってみたい所がたくさんあったはずだが、残念ながら時間を作ってやることはできなかった。僕は娘に言った。「次にイタリアに来るときは、おまえの好きな人と一緒においで。そしてそのときには今回行けなかった所も見ていらっしゃい」。娘は僕の心中を察してか、「そうだね」と言って笑った。
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2010-11-19(15:37) :
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第96回 イタリアでの反応
レッドカーペットを歩いて会場に入る。「YОYОCHU SEX と代々木忠の世界」の第1回上映会が行われるのだ。
ガイア・モリオーネさんというキュレーターの女性が来場者に挨拶をして、石岡監督を紹介する。今回、最終的に候補作が2つ残り、モリオーネさんが石岡監督作品を強烈に推してくれたおかげで招待が決まったらしい。石岡監督が制作意図をひと通り説明する。そして僕を紹介した。会場につめかけた人々に、僕は次のような挨拶をした。
「ヨーロッパには、フーコーに代表されるように『性は権力である』という考え方がある。でも、僕は受け入れられない。なぜなら、それとはある意味、対極の立ち位置で40年間やってきたからだ。実際、日本のAVというのは、今や90パーセントが形を見せる"アクティブなアメリカンポルノ"だが、僕は残りの10パーセント、マーケット的に見たら、それこそ細い線のようなところでずっとやってきた。そこに石岡監督がフォーカスしてくれて、今回ここで上映される運びとなった。みなさんがどういう反応を示してくれるのか、僕はとても不安である。と同時にワクワクもしている。ただし、それ以上に不安なのは、今、娘が会場に来ていて、初めて僕の仕事を見るということだ。そっちのほうが僕にはずっと怖いかもしれない」
壇上に立って話しはじめたら、最前列の関係者席に座っている娘と目が合ったので咄嗟にそんなことを言ったのだが、これがけっこうウケた。会場から拍手が返ってくる。やはりヨーロッパにおいても、性を扱っている作品は下に見られているのである。その中で、自分の子ども、それも娘をつれてきたというのは、それなりにインパクトがあったのだろう。
すでにニュースにも書かれているが、加藤鷹が失神するシーンでは笑いと拍手が起こった。そして女性が追い込まれていって、オーガズムで涙を流すところでは、やはり受け入れられない女性がいた。その人は大声で怒鳴りつづけた(といってもイタリア語なので、僕には何と言っているのか、わからなかったが)。まわりの席からは「シーッ」「シーッ」という声が漏れてくる。しかし、その女性はいっこうに治まらない。結局、映画祭のスタッフによって強制的に外へ出されたようである。
彼女が怒鳴り出す少し前から、客席からは空咳(からせき)が聞こえてきた。自分の中で葛藤が起きて受け切れないとき、それが咳として外に出る。催眠をやっていると、同じような場面に幾度も僕は遭遇した。何か触れられたくないものがあったりしたら、人は催眠を拒絶する。すると、空咳が出はじめる。それでも続けていけば、次には戻してしまうのだ。今、会場でこれだけ空咳が出ているということは、相当闘っているんだなぁ......と、僕は内心思っていた。しかし、そのとき映し出されていたのは、僕の作品の中で女の子が追い込まれつつもオーガズムを体験して涙するシーンであり、本来そこは感動すべきところだと思うのだけれど......。ある人にとって、それは屈辱的にしか映らなかったのかもしれない。でも、スクリーンの中の女の子は至福の表情を浮かべている。だからこそ、自分の中で整理がつかなくなったのだろう。
エンドロールが流れているとき、拍手が起こった。その拍手がいったん収まったのち、しばらくしてまた誰かが手を叩きはじめ、2回目の拍手が湧き起こった。それを聞きながら、僕たちはホッとしていた。でも、石岡監督はあの罵声をとても気にしている。僕は彼に「罵声があがるってことは、それだけ強烈なんだよ。石岡、おまえの勝利だよ! すごい作品だよ!」と言った。「そうですかねぇ、そうですよねぇ」と彼は泣き笑いのような顔になった。
上映が終わって席を立とうとしたら、白髪の女性が僕のところにやってきた。言葉は通じないものの、学者タイプで、真剣な眼差しで語りかけてくる。彼女の話の中で「カジュラホー」という言葉が何度か聞き取れた。インドのカジュラホーにある寺院群には目合(まぐわい)のレリーフが多数刻まれている。彼女はインドの性哲学について熱く語り、「カジュラホーに行けばいいよ」と僕にすすめているのだ。
インドの性哲学を語った女性は、サインも求めてくれた。
あくる日は、向こうのメディアからの取材が入っていた。僕も何社かのインタビューを受けたのだけれど、なかにはとても熱心な女性のレポーターがいた。彼女は映画論というより、オーガズムや思考・感情・本能の関係に興味を抱いたようだ。どんどん突っ込んで質問を浴びせてくる。僕は香港大学の講演で使ったチャートを取り出し、「イク前の思考オクターヴはこういう状態で、感情は封印されており、本能も技だけはあるんだけど、思考・感情・本能はバラバラなんだ。ところが、オーガズムを体験すると、この3つが統合されていくんだよ」というような説明をしたら、腑に落ちたみたいだった。彼女にしてみれば、仕事としてではなく、個人的に関心があり、おそらく自分自身が聞きたかったのだろう。
その翌日には、第2回上映会が行われた。今回は罵声を浴びせる女性もいなかった。上映が終わってホールを出ると、今、映画を見たという人たちが声をかけてきた。一人目は精神科医をしている男性。目を潤ませながら、僕の手を強く握って語りかけてくる。通訳をしてくれたスタッフによれば「あなたの言わんとすることは、私にはよくわかる」と言ってくれている。
僕の考えに熱く共鳴してくれた精神科医。
二人目は大学の教授。彼は「感動した! イタリアに来てくれてありがとう。お互い文化は違うけれど、もっと交流すべきだ。あなたともっと話がしたい」と語りかけてくる。
西洋と東洋はもっと交流すべきだと語る大学教授。
精神科医にしても、大学教授にしても、彼らの気持ちを僕のほうこそもっと聞きたかったし、たとえ30分でも腰を下ろして話がしたかった。しかし、取材の予約が入っているとのことで、やむなくその場を離れざるをえなかったのが残念でならない。
彼らと膝を交えて話をすることはかなわなかったけれど、短い時間ながらも強く感じたのは、たとえ文化や民族が違おうとも、彼らもまた今の時代を真剣に憂いている――という事実だった。
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2010-11-12(15:48) :
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第95回 レッドカーペット
無事帰国しました。映画祭をはじめローマでの詳細は、次回ご報告いたします。
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2010-11-05(15:57) :
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