週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第170回 相手の気持ちがわかる方法
相手の気持ちを知りたいというのは、恋愛が始まる前は当然のこと、始まってからもしばしば起こる欲求である。いや、恋愛に限らず、人間関係全般において生じると言ったほうがいいかもしれない。
たとえば仕事で、取引先から新たな提案があったとする。相手の言葉を信用してその誘いにのっかるのか、うまい話には裏があるとばかりに辞退するのかで、会社の命運が分かれることだってある。
嘘か真かといった話だけでなく、人生においては、もしもあのとき心情を察してやれれば、もっと何かをしてあげられたのに……というケースだってあるだろう。自分がそうされたらうれしいように、相手にも言うに言えない事情があるなかで、その本音を汲み取ることはお互いの絆を強くする。
マルコ・イアコボーニ著『ミラーニューロンの発見』(塩原通緒訳、早川書房刊)によれば、相手の顔の表情を単に模倣することで、相手の感情と同じものが自分の中にも湧き起こることが確認されている(脳内模倣)。
ところが、被験者に「鉛筆」をくわえさせると、自分の顔を思いどおりに動かせず、表情の模倣ができない。加えて、「鉛筆」をくわえるという運動活動の信号によって、ミラーニューロンの運動活動が妨げられ、感情の知覚もうまくできなくなるのだという。
僕は現場の何倍もの時間をかけて女の子たちと事前に話をする。それは相手の思いを感じ取り、そして感じたものを相手に伝えていくというキャッチボールである。相手とつながってわかり合えたときには、心地よさが伝わってくる。
とはいえ、そういう人ばかりではなく、なかには僕の言うことがまったく理解できないと顔に描いてある人や「そうは言っても、こうじゃないですか」と反論ばかりが返ってくる人もいる。そんなときには、僕も伝えようとしていることが相手の中心に届いていないのを痛感する。
なぜ届かないのか? 彼女たちに共通しているのは、性に関して偏った知識や情報のデータバンクを持っているということだ。彼女たちは僕の言ったことをひとつひとつ自分の中のデータバンクと照合している。たとえ感情や本能に属する話であっても、つねに分析する癖がついている。それはあたかも思考という名の「鉛筆」をくわえつづけているように僕には見える。
僕たちは、相手が泣いていれば「何が悲しいの?」、笑っていれば「何がおかしいの?」とついつい訊いてしまいがちである。でも、思考でそれを理解しようとするのではなく、相手が泣いていたら自分も泣き顔を、笑っていたら自分も笑顔をつくることによって、その心情までが理解できるのだ。
これはセックスのときにも有効である。たとえば指で彼女の局部を愛撫していたとする。彼女が感じてきて、息が荒くなり、あえぎ声が漏れる。男にしてみれば内心「やった!」である。ついつい愛撫する指にも力が入る。女の子たちがよく言う。「最初は気持ちよかったんだけど、途中から痛くなった」と。
彼女が感じてきたら「もっと感じさせてやろう」ではなく、男もそれを模倣すればいいのだ。彼女の表情をまね、息づかいをまね、発する言葉をオウム返しで言ってみる。彼女が「気持ちいい~」と言ったら、「オレも気持ちいいよー」と言えばいい。すると快感のミラーリング(脳内模倣)が起きる。
長年連れ添った夫婦は顔が似てくると言われる。お互い同じ表情をしている時間が長く、同じ感情を分かち合っていると、きっとそうなれるのだろう。
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2012-05-25(00:00) :
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第169回 結婚の新しいかたち
セックスに限らず、人とつながるのが苦手な人が増えている。もちろんそこには個々の原因があるのだが、女の子たちと話していると、本人が自覚している・していないにかかわらず、幼いころの親との関係が根っこにあると思われるケースが驚くほど多い。
つまり日本の家族が、もはや機能しなくなっているのだ。「核家族」とはそれまでの「大家族」に対して生まれた言葉だ。1組の夫婦と未婚の子どもから成る「核家族」が、戦後、地方から都市への人口流動によって一気に増えた。高度経済成長がもたらす夢の生活が、そこには待っているはずだった。
だが、資本主義社会が水面下で求めていたのは、安価な労働力の確保であり、消費者の拡大ではなかったのか? 経済競争は「家族と過ごす時間」をも「働く時間」に充てさせた。
「大家族」という共同体は骨抜きにされ、誕生した「核家族」も一家の中心を(共働きならば2人とも)企業に取り上げられた。家族崩壊の行方は、現在急増している「単身世帯」を見ても明らかである。こんな現状の中で、いちばん大事な時期に子どもが親から充分な愛情を受けることなど、それこそ夢物語ではないのかとさえ思う。
だから、親子の関係を修復するためには、まずは「家族」が再生しなければどうにもならないんじゃないかと思うのである。では、どうしたら「家族」が再生できるのだろうか?
中国の雲南省に「モソ人」という少数民族がいる。彼らは「大家族型」の「母系社会」で、「通い婚」がいまだに行なわれている。「通い婚」とは、男が女の家に夜だけ通ってくる。通ってくるのであって、そのまま一緒に暮らすわけではない。2人の間に子どもが生まれても基本的にそれは同様で、男は自分の実家へ帰っていく。
「だとすれば、生まれた子に父親は不在なのか?」と思われるかもしれないが、モソ人は子を産んだ女性の男兄弟たちが父親代わりをする。もともと大家族なので、一家全員でその子を育てるということだろう。だから、実家へ帰っていった生物学上の父親も、ひとり寂しい思いをしているわけではなく、自分の実家で生まれた女兄弟の子どもを父親代わりとして育てていくのだ。
大家族なので大人たちはたくさんいる。自分の子ではなくても血のつながった家族には変わりない。いや、一夫一婦制ではないので「自分の子」という概念すらなく「わが家の子」なのだろう。
「通い婚」の場合、女に対する愛情がなくなれば男は来なくなる。女の側も嫌いになれば拒絶できるし、別の男を呼んでもOKなのだ。日本人から見ると、「節操がない」と思うだろうか? しかし、事前面接や現場で既婚女性が「セフレが○人いる」と言うのを毎回のように耳にすると、いまや日本で一夫一婦制は実質的には成り立っていないようにも僕には見えるのだ。
「通い婚」がいいなと思うのは、まず、幼い子どもにとって母親が安定しているという点である。お嫁に行くこと自体が、もうストレスなのだ。母系であれば嫁ぐ必要がない。家族みんなが親みたいなものだから、その子に注がれる愛情はふんだんにある。そこで育まれた、世界への、そして自分自身への信頼感こそが、人とつながるためのかけがえのない土台となるのである。
家族再生のヒントとして「通い婚」があるのではないかと僕は思うのだが、どうだろう?
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2012-05-18(00:00) :
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第168回 元東電社員の証言
先月3日の「報道ステーション」(テレビ朝日)にて、元東京電力社員の木村俊雄さん(47歳)の証言が放送された。彼はかつて福島第一原発にて原子炉の運転や制御棒などの管理をしていた技術者である。番組を見た人も多いと思うが、彼の証言を何カ所か要約すると、次のようになる。
「故障原因といっても、どれがどのくらい壊れたのかさえ、まだ洗い出してはいない。格納容器のフタさえ開いていない状況で、『安全だ』『妥当だ』とよく言えるものだ」
「かつて発電所の運転日誌を書き換えることはやっていた。都合が悪いときにはコンピュータにアクセスして書き換える。でも、規制側にはわからない。技術力がないから、東京電力に手玉に取られてますよ」
「1991年10月30日に福島第一原発の1号機で海水漏洩があり、タービン建屋の地下1階にある非常用ディーゼル発電機が水没し、機能が喪失しました。『津波が来たら大変じゃないか、メルトダウンするじゃないか』と言ったら、上司は『そのとおりだ。鋭いよね』と褒めてくれました。上司は『津波を過酷事故の中に盛り込むのは、じつはタブーなんだ』と。その言葉を聞いたときに愕然としたし……そんなもんなんだと思った」
「耐震の指針も、きちんと世界の地震学の定説に合わせて造ったとすると、日本の国土に原子力発電所は造れません――それを知っているのに、知らないフリをしている。少なくとも電力会社の人間は知っているはずです」
この証言を聞いても、昨年の事故以降の東電の対応を見ていれば「寝耳に水」というよりは「さもありなん」と思えてしまう。だが、この証言が凄いのは、実際に福島第一の内部で働いていた技術者の言葉というところにある。僕はこれまでジャーナリストたちが「東電の体質」とか「原子力村の利権」について語るのを聞いても、心にドーンとは来なかった。
木村さんは、東電の体質と原発の実態に嫌気が差し、10年前に東電を辞めている。彼はそのとき現代社会に失望したのかもしれない。いま彼はエネルギーと食料の自給自足を目指し、高知県の自然の中で奥さん子どもと暮らしている。いったんは覚めた目で社会を突き放して見たものの、多くの人々に事実を伝える必要性を感じたからこそテレビに自分の姿を晒したのだろう。本名や年齢を出し、顔にボカシも入れず、音声もそのままで。
木村さんには気負いというものが見られなかった。穏やかな話しぶりにはインテリジェンスや教養もうかがえる。そして、地に足の着いた彼の生き方がそのまま伝わってくる。だから、この手の告発にありがちな私怨も、私利私欲も、彼にはいっこうに感じられなかったのだ。
ところがである。木村さんがしゃべったあと、メインキャスターの古舘伊知郎はなんのコメントもしない。僕はてっきり「この件については、今後徹底的に究明していきます」とでも言うのだろうと思っていた。あるいは解説者を入れて、証言の内容を検証しながら掘り下げていくとか……。
おりから原発再稼働が話題になっているその渦中で、木村さんの証言を東電側にぶつけて白黒をはっきりさせるのが、ジャーナリズムの使命ではないのか。運転日誌を書き換えたのなら、何をどういうふうに改ざんしたのか、なぜ突きとめようとしないのだろう。それを、証言のみ流しっぱなしで尻切れトンボでは、ますますテレビ離れが加速するに違いない。
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第167回 欲情する脳
前回、「共感する能力」は男より女のほうがもともと高いという話を書いた。「共感」とは、ミラーニューロンの機能でもある。
これまで現場で会った多くの女の子たちが「男の人がイカせようとしてるのって、わかっちゃうのよね」と言う。「イカせよう」という思いが、ミラーニューロンを介して伝わってしまうのだろう。これではイクどころではない。イカせようと思ったら、女はイカないのだ。
けれども、ミラーニューロンによってバレバレというのなら、自分が真に欲情し、それを言葉や表情に出せばいいと僕は思う。そうすれば、相手の脳の中でも欲情のスイッチが押される。
ふり返るに、太賀麻郎も、日比野達郎も、平本一穂も、自分が欲情しているのを相手の女の子に表現した。僕も男優たちには「おまえが気持ちよさを出せよ!」と言いつづけてきた。当時、ミラーニューロンに関する知識はまったくなかったけれど、「男が冷めていて、なんで女が欲情するんだよ」とはずっと思っていたのだ。
だから、もしも女をイカせようとするならば、自分が先に欲情し、それを素直に表現するのが、いちばん手っ取り早くて簡単な方法と言える。
たとえば「お姉様淫女隊 ジラして犯してのどの奥まで咥えてあげる!」という作品には、中堅どころの男優たちが出演している。その1人が愛川賢剛。男優歴5年目にして初めて受け身を経験することになる。しかし「受け身になって感じなきゃいけない」という思考がずっと働いている。
相対する淫女隊は、渡辺美乃、望月英子、新田利恵。彼女たちは局部を見せたり、オナニーをしてみせたりするのだが、愛川の「イカなきゃいけない」という思考はなかなか落ちない。彼はそのもどかしさから、ついには自分でシゴき出す。すると、淫女隊の3人も一緒に絶頂を迎えるのである。
もう1人は大島丈。当時、彼は男優歴8年目で約2000本に出演している。淫女隊といっても、大島からすれば新人女優には違いない。その彼女たちが主導権を握って自分を責めている。大島も明け渡そうと努力はしているものの、経験が長いぶん、なかなか自我が壊れない。
淫女隊は大島の両手を縛り、目かくしをして、そのまま別の若い男優にちょっかいを出しはじめる。こちらは男優歴4カ月、出演数30本。経歴からすれば大島と比ぶべくもない。淫女隊は若い彼をイジり、それを大島に聞かせている。
こういうシーンがアダルトビデオにはしばしば登場する。目の前のセックスを見せつけたり、目かくしをして卑猥な声を聞かせたり……。このとき視覚や聴覚を通してミラーニューロンが発火する。ただし、セックスしている者や卑猥な声の主が本当に欲情していればだが。
若い男優の声は大島の頭の中に同じ快感を生む。そうなれば、男優のプライドなどよりも「やりたい」が勝るのである。淫女隊の直接の愛撫に、大島が悶えはじめる。すると彼女たちの雰囲気が一変する。淫女隊の3人もまた感じているのだ。大島は両手を縛られているので、淫女隊に対して文字どおり指1本ふれてはいない。彼がやったことといえば、欲情し、それを表に出しただけである。
ミラーニューロンの視点からこの作品を見返すと、若い男優の欲情が大島に伝わったあと、大島の欲情が淫女隊に伝わり、その快感をまた大島が受け取ってさらに欲情しているように見える。つまり、大島と淫女隊がお互いにフィードバックしながら高まっているのだ。イッたあと、大島はものすごく幸せそうな顔をしている。なんの屈託もない笑顔。人はこんなにも素直な表情ができるんだよなぁと思う。
にもかかわらず男たちは、いや今は女たちも、逆へ逆へと頑張っているように僕には思える。
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2012-05-04(00:00) :
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