週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第306回 宗教について思うこと
地下鉄サリン事件から20年が経過した。最後のオウム裁判の判決は今月にも言い渡されることだろう。けれども、これでオウム問題が終わるわけではなく、オウム真理教の後継団体アレフは今なお信者を増やしているという。
若い人たちはかつてオウムが起こした事件の数々をリアルタイムでは知らないかもしれない。だがこの20年、メディアはことあるごとにオウムの特集を組んできた。ネットを開けば、オウムがしてきたことはすぐにでも見ることができる。なのに、なぜ今アレフに入信する人がいるのだろう。
社会が不安定だから、居場所がなかったり、自分の存在価値を実感できない人たちが、拠りどころを求めて吸収されていくのだろうか。
先日見たテレビの特集番組では、アレフにおいてクンダリニーの覚醒とチャクラの開発のため、信者が呼吸法を実践しているところが映っていた。「何秒吸って、何秒止めて、何秒吐いて」とやっている。呼吸法によってトランス状態を作り出し、そこで暗示を入れれば、簡単にマインドコントロールができてしまう。たとえば仮に「神の理想の国を創る。あなたは選ばれた人なんだ。社会は堕落している。神の国を実現するためには、この堕落した社会を消さなければいけない」と言われたらどうなるだろう……。
また、呼吸法でトランスに入っているときには幻覚を見ることがある。それは光だったり、過去世だったり、宇宙創成の何かだったりもする。「チャネリング」シリーズの頃、そのような現象は現場でよく起きた。重要なのは、光などを見たことではなく、それを通して本人にいったいどんな気づきが起きたかのほうである。ところが、気づきも起きないうちから「光が見えたのは、悟りの一歩手前まで来ている証(あかし)だ。だからもっと修行しよう!」と言われれば、言われるがまま修行にいっそうのめり込み、そこでの教えがすべてになってしまうに違いない。
話は変わるが、僕が生まれ故郷にいられなくなり16で大阪に出て、20代後半で実家に戻ったときには、母だけでなくもう父も亡くなっていた。日に幾度となく妹が仏壇に手を合わせていた。亡き父母に語りかけているものと最初は思っていた。けれども、仏壇の中に両親の位牌は見当たらず、妹が拝んでいるのは小さな掛け軸のようなものだったのだ。僕がいない間に、妹はある宗教に入信していた。
実の兄が家を飛び出し、腹違いの妹弟たちと暮らすなか、妹はその宗教に頼らなければ生きるのがつらすぎたのかもしれない。何もしてやれなかった身としては申し訳ないと思うけれど、妹のその宗教への入れ込み方は僕から見れば度を越していた。その世界がすべてになっている。一方、妹から見れば、そのありがたい教えを理解しようともしない僕はきっと愚かな人間に映ったのだろうが……。
カルト教団や新興宗教のみならず多くの宗教は、自分のところ以外を邪教と見なす。いや、同じ宗教でも宗派が違えば、お互いがお互いを否定し合う。宗教宗派間の争いでは、血で血を洗う凄惨な行為がくり返されるのも珍しくはない。人々を救済するはずの宗教が、なぜ平気で人を殺せるのか。それは、“絶対”というものを作ってしまったからではないかと思う。この世に絶対などないにもかかわらず、それを持ってしまったがゆえに、それを守ろうとするがゆえに、戦わざるを得なくなる。
もちろん、僕は宗教のすべてを否定しているわけではない。宗教が多くの人々を救っているというのも事実である。だが、宗教から学ぶことはあっても、僕は“信者”にはならない。自分の人生をその宗教の教義・教典に預けるつもりはないし、“絶対正しい教え”に隷従したくもない。日々右往左往しながらも、その体験を通して学び、自分の足で歩いていきたいと思うから……。
2015-04-10(00:00) :
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