週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第107回 村西とおる
村西とおるは只者ではない。先日、映画「YOYOCHU」の公開イベントで久しぶりに彼と会い、あらためてその思いを強くした。
村西とおると僕には共通項がある。それを一言で表現するなら「狂気」であろう。僕の狂気は、これまでの生い立ちゆえか、自分でも気づかぬところで自然発生的に起きてくる。一方、村西は、知り尽くしたうえで狂気を演じている。だから凄いのである。
これまで僕は、ビデオに出演する女の子の内側に内側に入っていこうとした。今にして思えば、内側を覗こうとするがあまり常識を超えたこともある。それに対して村西は、外側へ外側へと自らがパフォーマンスしていった。「ナイスですね~」という村西トークをはじめ「ハメ撮り」「駅弁ファック」「顔面シャワー」など、彼が発した言葉やパフォーマンスは、男優・監督に多大なる影響を与えたのだ。
先日のイベントには、AV監督の二村ヒトシも観客として来ていた。彼は後輩の若手監督たちを引きつれていたこともあり、アドバイスを求めようとしたそのとき、村西が言い放った言葉がある。「あなたに足りないのは前科ですよ」。会場がドッと沸く。ふつうの人間なら前科など知られたくないものだが、僕も村西も前科があるので、そこに引っかけて切り返してみせた彼特有の機転のよさだ。
しかし、ジョークにまぶしながらも、僕はそこに村西の本音を聞いたと思った。「おまえら、踏み込み方がイマイチ甘いんだよ」と。今は、監督にしても男優にしても、不良の部分がない。犯罪を犯せとまでは言わないが、みんな、はみ出さないで、うまく納まっている。その中で仕事をこなしているから、やはり頭の中で処理してしまっている。それでは、人の心を揺さぶることなどできない。若手の監督が作品を知らしめそうとすれば、あの狂気は絶対に必要なのだ。
今回のイベントが決まってから、村西とおると十数年ぶりに再会できるのを、僕は心待ちにしていた。ウツのとき、自分はこのまま引退だろうなと思っていた。自殺こそ考えなかったけれど、死を覚悟し、もう残りの時間はそれほどないだろうと感じていたから。同じ頃、村西は莫大な負債を抱え、マスコミにおもしろおかしく書き立てられた。そういう情報を介してしか、彼の状況は知り得なかったので、村西もこのまま消えていくのだろうか……と正直、思った時期もある。だから、昔以上に元気な彼に再会できたのが、僕はこの上なくうれしかったのだ。
ただ、世の中を変える力を秘めている男だからこそ、言いたいこともある。村西は“やりつづける”男である。自らがプレイヤーという点でもそうだが、まるで恐れを知らないような彼の生き方を見ていても、そこにはいつも頂点をめざして闘いつづける男の姿がある。たしかに“やりつづける”のは、男の宿命かもしれぬ。
でも「それって疲れるだろう?」と、信頼する村西とおるゆえ、大きなお世話を重々承知で言いたいのだ。「村西よ、時代は変わってしまったんだぜ」。彼は僕より10歳下だが、それでももう62歳だ。「そろそろ“やりつづける”から“ありつづける”にシフトしてもいい時期じゃないか」と……。
力のかぎり泳ぎつづけていれば、いつか泳げなくなる時が来る。だが、とうとうと流れる大河とともにあれば、つねにまわりは変化してゆくし、至るべき所に結果として至るのだ。いや、ありつづけることでしか至れない場所があるはずだと僕は思う。
村西監督を男優として撮りたい作品がある。僕のことなのでコンテはない。ただ、村西ほどの男が自分を明け渡せる女性といえば、バリューの面でも実績の面でも、南智子くらいしか思い浮かばない。この二人のガチンコを僕は見てみたいのだ。
イベントで会ったとき、僕はその話を村西に振ってみたのだが、彼はなにも答えなかった。けれども、もし自分を明け渡せば、彼は“ありつづけること”とは何かを体感するに違いない。“ありつづける”にシフトした村西は、荒廃した今の日本の性文化に、必ずや大きな一石を投じてくれるはずである。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2011-02-11(11:44) :
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