週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--------(--:--) :
スポンサー広告
:
このページのトップへ
第165回 つながれなかった男たち
彼と初めて会ったのは、助監督として呼んだピンク映画の撮影現場だった。もう三十数年前のことだ。もともと水商売をしていた男で、人扱いが上手かった。仕事もテキパキしている。アテナ映像を興したとき、彼をプロダクション部門の責任者として迎えた。愛染恭子を育てた男である。
彼はもともと酒が好きだったが、会社に出てきても目は真っ赤で、酒の匂いもぷんぷんさせるようになっていった。これではどうにもならないと、僕はプロダクション部門を独立させることにした。そうすれば責任もリスクも背負う。なにより自分で判断しなければならない。
とはいえ、そこには当時、月に何千万と稼ぐ愛染も所属している。充分やっていけるだろうと僕は思った。ところが、彼はプロダクション経営よりも毎晩飲むほうに忙しかったようだ。
肝臓がガタガタで入院した病院の医者から「親族を呼んでください」と言われたとき、僕も病室に駆けつけた。「しゃんとせんかい!」と彼の手を握るのだが、死が近づくにつれて指先からだんだん冷たくなっていくのがわかった。まだ50代だった。
アテナの創業期には、元KGB(ソ連国家保安委員会)と称するドイツ人とも一緒に仕事をした。当時、撮影でフランスに行く際、モスクワ経由パリ行きが早いのだけれど、通訳である彼が断固としてモスクワ経由を拒否するものだから、遠回りのアンカレッジ経由で行ったのを覚えている。
彼はもともと新聞社の特派員として日本に来た。そして日本の女に惚れて、子どもができた。僕が会ったころは、KGBから抜けて主に外タレのプロモーターを生業(なりわい)としていた。
今のようにプロダクションが確立している時代ではなかったから、外国人のみならず出演希望の女の子を紹介してくれる彼は貴重な存在でもあった。ちなみに「ザ・面接」シリーズで次の場面へ進むときに差し込まれる「NEXT」は、彼の声を今もそのまま使っている。
彼も酒が原因で50代で亡くなった。線香を上げに家に行ったとき、奥さんから特派員時代の写真を見せられた。そこにはインドのネール首相はじめ中東の要人たちにインタビューする彼が写っていた。元KGBというのも、あながち嘘ではなかったのかもしれないと遺影に手を合わせつつ思った。
かつてこのブログに
「死んだ男が残したものは」
という話を書いた。その話の主人公である湯本(享年59歳)も、毎晩、焼酎を浴びるように飲んでいた。一周忌の墓参りがてら湯本の実家を訪ねたとき、彼が亡くなった部屋の引き戸には大きな穴があいたままだった。亡くなる前、暴れたのか、倒れたときにぶつけたのかはわからないが、壮絶な死にざまだったのだろうと思う。
彼らは3人が3人とも社交的だった。その場を盛り上げるし、一緒に飲んでいる人はおそらく楽しい酒席だったことだろう。けれども、ずっとそばにいた僕にはわかるのだ。彼らが見せる底抜けに明るい笑顔も、豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格も、本当はもういっぱいいっぱいの状況であることを。
真に酒が好きな人は酒の味を楽しむ。だが、彼らは味わうどころではなく、まるで何かから逃げるように酒をあおった。まるで賑やかに騒いでないといたたまれないかのように。
彼らはいったい何から逃げようとしていたのだろう。きっとそれは孤独からだ。自分の本当の姿を気取られまいとして、虚勢を張り、違う自分を演じる。そしてそのギャップに苦しみ、また酒へと逃げる。しかし、違う自分を演じるということは、そもそも自分が本当の自分とつながっていないということである。自分とつながれない人間が、どうして人とつながれるだろう。
これは、男性体験が100人、200人という女性たちと根っこは同じだ。彼女たちは次から次に男とセックスすることで、彼らは酒を暴飲することで、孤独を束の間まぎらわす。どちらも、まさに自傷行為なのである。
ずっと僕は彼らとお互いを見せ合ったつもりでいた。だから、彼らにとって耳が痛いことも臆せずに言ったし、感情もぶつけた。でも、死なれてみて、結局、僕もつながれていなかったんだと思う。未熟だったし、いま思えば僕も彼らとチョボチョボだったのだ。
にもかかわらず、なぜ僕は酒に溺れて死ななかったのか……。もともと彼らのようにガブガブ飲めるほうではなかったというのもある。そして、幼いころから自分だけが頼りという生き方を強いられてきたのもあるように思う。
彼らのうち日本人の2人は、いずれも地方出身だが、ともに名家に生まれ、幼少期、経済的には何不自由のない生活を送ってきている。ドイツ人の実家は知らないけれど、新聞社の特派員として要人たちにインタビューするくらいだから、やはりエリートなのだ。
それにひきかえ僕は、戦後、自分の食うものは自分で手に入れるしかないような生活だった。高校の時に故郷を飛び出してからは帰る家すらない。せめて自分くらいは自分の味方をしないともう生きていけない現実。その中でたったひとつ身につけたのは「僕自身を信じるということ」だったのではないかと思う。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2012-04-20(00:00) :
週刊代々木忠
:
コメント 1
:
トラックバック 0
このページのトップへ
前の記事
«
ホーム
»
次の記事
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ
コメントの投稿
名前
タイトル
メールアドレス
URL
本文
パスワード
非公開コメント
管理者にだけ表示を許可する
にゃーん♪
RWh5gu9K
にゃんにゃん♪
ご主人たまと遊びたいにゃん♪
いっぱい、えちぃ事、しませんかぁ???♪
http://44304Z3l.a.ujjz.org/44304Z3l/
2012-04-26(17:22) :
たま
URL
:
編集
このページのトップへ
« 前の記事
ホーム
次の記事 »
このページのトップへ
カテゴリ
週刊代々木忠 (343)
最新記事
第344回 修羅場をくぐって (03/04)
第343回 誰のために (02/26)
第342回 みにくいアヒルの子 (02/19)
第341回 虚実皮膜 (02/12)
第340回 「満たされない女」と「向き合えない男」 (02/05)
第339回 トランスとは何か? (01/29)
第338回 笑ったり、泣いたり、怒ったり (01/22)
第337回 2015年をふり返って (12/18)
第336回 SM (12/11)
第335回 幸せが生まれる場所 (12/04)
第334回 幸福のとき (11/27)
第333回 セックスレスの大きな要因 (11/20)
第332回 対話Ⅲ (11/13)
第331回 女の側の心理――そこを男は見落としている (11/06)
第330回 世界一貧しい大統領 (10/30)
第329回 深まる秋に (10/23)
第328回 総理大臣の呼吸法 (10/16)
第327回 何のためにセックスするのか? (10/09)
第326回 サイレントベビー (10/02)
第325回 真似る (09/25)
第324回 スマホ買いました… (09/18)
第323回 売買春は合法化すべきか? (09/11)
第322回 右脳セックス (09/04)
第321回 夏の疲れに (08/28)
第320回 セックス経験1回の女の子 (07/31)
第319回 いじめの根っこ (07/24)
第318回 対話Ⅱ (07/17)
第317回 動き出した若者たち (07/10)
第316回 癒着と拡張 (07/03)
第315回 水平目線 (06/12)
月別アーカイブ
2016/03 (1)
2016/02 (4)
2016/01 (2)
2015/12 (3)
2015/11 (4)
2015/10 (5)
2015/09 (4)
2015/08 (1)
2015/07 (5)
2015/06 (2)
2015/05 (5)
2015/04 (4)
2015/03 (4)
2015/02 (4)
2015/01 (3)
2014/12 (3)
2014/11 (4)
2014/10 (5)
2014/09 (4)
2014/08 (2)
2014/07 (4)
2014/06 (4)
2014/05 (5)
2014/04 (4)
2014/03 (4)
2014/02 (4)
2014/01 (3)
2013/12 (4)
2013/11 (5)
2013/10 (4)
2013/09 (4)
2013/08 (3)
2013/07 (4)
2013/06 (4)
2013/05 (5)
2013/04 (4)
2013/03 (5)
2013/02 (4)
2013/01 (3)
2012/12 (3)
2012/11 (5)
2012/10 (4)
2012/09 (4)
2012/08 (3)
2012/07 (4)
2012/06 (5)
2012/05 (4)
2012/04 (4)
2012/03 (5)
2012/02 (4)
2012/01 (3)
2011/12 (4)
2011/11 (4)
2011/10 (4)
2011/09 (5)
2011/08 (2)
2011/07 (5)
2011/06 (4)
2011/05 (4)
2011/04 (5)
2011/03 (4)
2011/02 (4)
2011/01 (3)
2010/12 (4)
2010/11 (4)
2010/10 (5)
2010/09 (4)
2010/08 (2)
2010/07 (5)
2010/06 (4)
2010/05 (4)
2010/04 (5)
2010/03 (4)
2010/02 (4)
2010/01 (3)
2009/12 (4)
2009/11 (4)
2009/10 (5)
2009/09 (4)
2009/08 (2)
2009/07 (4)
2009/06 (4)
2009/05 (5)
2009/04 (4)
2009/03 (4)
2009/02 (4)
2009/01 (5)
2008/12 (4)
QRコード