週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第144回 いけないと思うとやめられない?
タバコがまた値上げするのしないのという話があり、それでなくても喫煙者には肩身の狭いご時世であるし、この不況下、タバコ代もバカにはならない(たとえば1日1箱410円として1年で約15万円)。「迷惑がられて、税の負担まで増やされるんじゃ、やってらんない!」「次に値上げしたら、もうやめてやる!」と考えはじめている人も少なくないだろう。
禁煙外来ができ、禁煙を助ける貼り薬や飲み薬もある。昔に比べたら、禁煙は成功しそうにも思える。ただ、医師のひとりに聞いたところによれば、禁煙補助薬を使った成功率は約50%とか。この数値を高いと見るか、低いと見るかは人それぞれだが……。
さて、自分はどうかというと、タバコを吸いつづけている。途中やめたこともあるし、葉巻に変えたり、パイプの時代もあった。でも、今は無理してやめようとも思わない。なぜかというと、僕は体調の悪いときには美味しくないから吸わない。ヘンな言い方だが、タバコは僕にとって健康のバロメーターでもあるのだ。タバコが発がん率を上げるのは事実だろうけれど、僕に限って言えば吸いつづけてもう73歳。充分生きている。
健康に関心を持つのは確かにいいことだが、あまり神経質になりすぎるのはどうかと思う。タバコに限らず、やめようと思ってなかなかやめられないものは、この世にたくさん存在しているような気がする。ある人にとってはお酒が、別の人にとっては甘い物が、ギャンブルや風俗通いなんかもそうかもしれない。
年配の人なら知っているだろうが、昔「ヒロポン」というクスリが薬局で売られていた。ヒロポンの実体とは覚せい剤なのだが、当時は副作用についてよくわかっていなかったから、国も発売を許可していた。ヒロポンとはギリシャ語で「労働を愛する」という意味らしいが、実際に食べなくても寝なくても、疲れを感じずに働きつづけることができた。
ところが中毒患者が50万人を超え、国は1951年にヒロポンの製造・販売・使用・所持等を一切禁止する。当時、僕は中学生だったが、疲れたときにヒロポンのお世話になっていた大人たちが「これからは捕まるらしいぜ」「じゃあ、やめようか」と話していたのを覚えている。その後、彼らの大半はヒロポンをやめてしまった。
一方、僕が不良だった頃、シャブに手を出して抜けられなくなった人間を何人も見てきた。彼らは突然「刑事が来てるんじゃねぇか」とか、「あれは絶対オレのことを見張ってる」とか言い出し、窓から飛び降りたり、逃げ出したり、暴れたりした。幻覚なのだが、本人は大真面目だ。なぜこんな幻覚を見るのかといえば、それは「自分が悪いことをしている」という強迫観念からだろう。シャブもヒロポンも同じ覚せい剤だが、ヒロポンを打って窓から飛び降りた人間を僕は見たことがない。
いずれにせよ、覚せい剤はやっちゃダメで、例としては極端かもしれないけれど、僕が言いたいのは「自分はいけないことをしている」といった罪の意識が大きければ大きいほど、逆にやめられなくなるという側面がある、ということである。
自分にふり返ってみれば、かつての浮気がそれで、妻を苦しめているのもわかっているし、もうやめようと思うのだが、それでもやめられない自分がどうしようもなくダメな人間に思え、いろんな苦しさから逃れるために浮気をくり返していた。
そんな僕が浮気をしなくなったのは、なぜだろう。73という歳もあるかもしれない。ただ、僕と同年代の友人で今なお女を追っかけているやつもいるから、年齢だけが原因ではないようにも思う。やはり、とことんやって卒業したということだろうか……。ものによっては卒業するまでやったら、カネが持たない、体が持たないといった事情もあるだろうし、とことんやってみるべきだと一概には言えないけれど、罪の意識だけは持たないほうがいいように思う。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2011-11-11(00:00) :
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