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第303回 フクロウ


 世の中には収集家とかコレクターと呼ばれる人たちがいる。僕は自分でもそういうタイプじゃないと思うのだが、ただ、フクロウだけは別である。ちなみに、フクロウとミミズクは羽角(うかく)と呼ばれる耳のような羽毛があるか(ミミズク)ないか(フクロウ)で分けられているが、ここではまとめてフクロウと記すことにする。

 フクロウを収集してるといっても、生きているフクロウを何十羽も飼っているわけではない。フクロウの置物である。数からすれば、ゆうに100は超える。正確には「集めていた」だが、これはあとで書こう。

 フクロウを集めていると言うと少なからず意外な顔をされるし、「なんでフクロウなの?」と訊かれる。訊かれても……魅かれるとしか言いようがない。でも今回ブログに書くにあたって、なぜ魅かれるのかについても自分なりに考えてみた。

 女房と同棲を始めた頃から、僕はずいぶん鳥を飼ってきた。オウム、九官鳥、インコ、文鳥……あるときはマンションのベランダでアヒルを5羽飼っていたこともある。これまで犬も猫も飼ったけれど、ふり返れば鳥がいちばん多い。

 どうして鳥が好きなのだろう。1年近く前「散りぎわの美学」という話に剣道の達人のことを書いた。祖父母の家に預けられていた僕にとって、彼は実父以上に父のような存在だった。彼はメジロをよく捕りに行っていたし、育ててもいた。小学校から中学に上がっても、僕はメジロ捕りに連れていってもらった。

 戦後の殺伐とした時代、僕自身も荒(すさ)んでいた。ケンカ三昧の毎日である。そんな札つきの不良少年とメジロは一見つながらない。だが、野生のメジロでも、大事に育てれば懐(なつ)くのを僕はずっと見てきた。与えた分だけ返ってくる。そこには裏切りも嘘もなかった。メジロと向き合っているとき、僕はそのままの自分でいられたような気がする。

 それが原風景としてあるからか、鳥を見ていると僕は今でも癒される。家の近くの仙川に行くことはこれまでも書いてきたけれど(「きょうも川にいます」「いのちの清流」)、そこで見ているのはやはりいろいろな鳥たちだ。

 鳥のなかでもフクロウはじつに神秘的である。頭もよさそうだし、じっとこちらを見ていても何を考えているのか読めそうにない。多くの鳥はうるさいが、フクロウはハトに似た鳴き声で物静かだ。かと思えば首が180度回って真後ろを見ることもできる。

 かつて千葉の金束(こづか)で農家を借りていたとき、近くの大きなケヤキの古木にあいた穴にフクロウが棲んでいた。あるとき、すごい速さで一直線に地面まで降りてきて、地面すれすれで初めて羽ばたき、一瞬でスピードを殺すと、また違う方向へと飛んでいくのを目の当たりにした。その間、羽音はまったく聞こえない。見ていなければ降りてきたのにも気づかなかったことだろう。

 僕が持っているのは置物だが、なかには目にガラス玉を入れて、けっこうリアルなものもある。フクロウは独特の目をしている。そのせいか同じ置物でも、日によってその目がうれしそうに見えたり、寂しそうに見えたりする。自分の心のありようで、表情が違って見えるのだ。

 かつて鳥を飼っていた頃、フクロウを飼いたいと思ったことはあった。しかし当時、僕が行っていたペットショップにフクロウはいなかったし、そもそも自分で飼える気がしなかった。そんなとき、女房とドライブに出かけた先で、フクロウの置物を見つけた。胴体の部分が透かし彫りになっていて中が見える。その中にも小さなフクロウが彫られていた。後から入れたような跡はどこにもない。どうやって彫ったんだろう。僕はその木彫りのフクロウを買った。いま思えばここから収集が始まったのである。

 その挙句、100個以上ともなると、僕の部屋だけには納まらなくて、玄関、リビング、廊下、階段……と家のあちこちにフクロウは置いてある(下の画像はその一部)。女房は毎日家を掃除するが、そのたびに1つ1つフクロウをどけて掃いたり拭いたりしなければならない。少ないうちはよかったものの、家じゅうフクロウだらけになったとき、ついに収集禁止令が出た。僕も彼女の言うとおりだと思った。

 余談になるけれど、アテナ映像という社名の「アテナ」はギリシャ神話に登場する女神の名である。その女神の聖鳥がフクロウであると知ったのは、収集を始めて何年も経ったときだった。なにか縁があるんだよなぁと僕は思った。後づけには違いないが、あるものに興味を持つと想像さえしなかったつながりに気づかされたりもするものである。




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