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第273回 生活健康度チェックリスト

 住んでいる世田谷区の高齢福祉部(介護予防・地域支援課)というところからアンケート用紙が送られてきた。「生活健康度チェックリスト」という。僕は初めて受け取ったのだが、65歳以上で介護認定を受けていない人を対象に出しているようだ。

 チェックリストには35個の質問項目があり、「はい」「いいえ」で回答する。あなたにこういったアンケートが届くのは、ずっとずっと先だと思うが、後学のためにいくつかご紹介しよう。

 「バスや電車で1人で外出していますか?」「はい」
 「階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか?」「はい」
 「お茶や汁物等でむせることがありますか?」「いいえ」
 「週に1回以上は外出していますか?」「はい」
 「自分で電話番号を調べて電話をかけることをしていますか?」「はい」
 「今日が何月何日かわからない時がありますか?」「いいえ」
 「自分が役に立つ人間だと思えない」「いいえ」

 自分の歳は知りつつも、どこかまだ若い気持ちでいる。でも、前に書いた運転免許の更新もそうだが、このアンケートに答えていると「もうあなたは若くないんですよ」と繰り返し言われているように思える。「チェックリストは、日常生活に必要な機能の低下や状態を確認するためのものです」と説明書きにあるけれど、人によってはアンケートを終えて、気分的に老け込んじゃったりしないんだろうか……。

 チェックリストの回答欄は、質問ごとに「はい」「いいえ」のどちらかのマスに淡いブルーの色がついている。先に紹介した7問への僕の回答は、すべて白いマス。つまり反対側のブルーのマスを答えた場合(たとえばバスや電車に1人で乗れないとか、お茶や汁物でむせるとか)、その項目は生活健康度がイエロー信号という意味合いなのだろう。

 では、僕は全部白いマスだったかというと、ブルーもあった。ちなみに次の質問がブルーである。

 「地域の活動や講座に月に2回以上参加したり、定期的に趣味の活動をされていますか?」「いいえ」

 「地域の活動や講座」とは「町会、自治会活動」「高齢者クラブ」「ふれあい・いきいきサロン」「はつらつ介護予防講座」「趣味のサークル活動」など、とある。

 僕が「地域の活動や講座」に「いいえ」だったのは、知らなかったのもあるけれど、正直あまり興味がなかった。知った今でも、行きたいという気にならない。なぜだろう? 老人扱いされるのが癪(しゃく)だというのもあるし、行かなくても事足りているのもある。

 だが、それは毎日仕事をしているからである。もしAV監督をやめたら、そうは言っていられないだろう。新たな出会いや日々の刺激、外に出る機会は激減し、ライフスタイルはまったく違ったものになる。そうなれば歳相応に一気に老け込むかもしれない。

 しかしである。そうなっても、僕は「地域の活動や講座」に行くのならば、近くの幼稚園か保育園にでも行って、園児たちと遊ぶほうがよほど楽しいだろうなぁと思う。世田谷はどうかわからないが、江戸川区には老人ホームと保育園が同居する施設もあると聞く。

 であれば、老人ホームに入らなくとも、お互いが交流できる公的なサービスというか仕組みは作れないものだろうか。幼い子どもと老人はもともと相性がいい。おじいちゃんやおばあちゃんは孫に甘いし、幼い子どもは老人に対して偏見がない。老人たちは子どもたちから元気をもらえるし、子どもたちは親より上の世代の知恵や文化を吸収できる。弱者を慈しむ心もきっと育まれることだろう。

 そういう仕組みが難しいというなら、僕はとりあえず子どもたちの行き帰り、横断歩道で旗振りからでも始めようか……。地域の講座に行けば、講師やインストラクターにいろいろお世話をしてもらうことになる。でも、自分がお世話をするほうが、人はイキイキするに決まっている。「誰かの役に立てている」「誰かから必要とされている」――それが日常生活を健康に営むためには絶対に必要なのだから。






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