週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--------(--:--) :
スポンサー広告
:
このページのトップへ
第257回 トマトは野菜ですね
運転免許の更新において、70歳からは「高齢者講習」が始まるんだけど、75歳になると、さらにその前に「講習予備検査」というのを受けなければならない。早い話が年を取ると、やらなきゃいけない検査や講習が多くなるということなのだ。
で、先日「講習予備検査」を初めて体験した。これは別名「認知機能検査」とも呼ばれる。まず教習所内の一室に受検者が集められる。この日、集まったのは、僕を含めて男性5名、女性1名の計6名。教官は30代とおぼしき青年。その青年教官が「腕時計をしている人はポケットかバッグにしまってください」と言う。
何が始まるのだろうと思っていると、おもむろにイラストを見せられる。戦車や太鼓や人間の目やトマトなどなど、最終的には16枚の絵を見せられることになるのだが……。たとえば戦車の絵を見せながら、「これは戦争のときに使われますね」と幼い子どもに諭すように青年教官が言う。「太鼓は何ですか?(ちょっと間があって)はい、楽器ですね」といった調子で。
「幼稚園児じゃねえんだからよ!」と内心思う。近くの席の男性も、不快を顔に出している。そりゃそうだ。ところが、である。人間の目のイラストをさして「これは何ですか?」と青年教官が訊いたとき、いちばん前の席にすわっていた紅一点の女性が「目!」と答えたのだ。ええーっ!? 「トマトは?」「野菜!」「はい、そうですね、果物じゃないですね、野菜ですね!」。
切り替え、早いなぁと思う。それにひきかえ、僕は素直になれない部分があって、適当に聞き流していた。16枚全部の説明が終わると、教官はイラストをそそくさと棚に仕舞う。そして「お渡しした冊子の1ページ目を開いてください」と言う。
そこには「今は何年ですか?」「今は何月ですか?」「今日は何日ですか?」と、バカでかい字(しかも総ルビ)で印刷されている。「いや、それはねえだろうよ」と内心毒づく。教官は「絶対に言葉を発しないでください。ヒントになりますから」。黙って僕も答えを書く。
「次のページをめくってください」。指示どおりめくると、何も書かれていない。「そこへ時計の文字盤を描いてください。なるべく大きく描いてください」。大きな○を描いて、12、6、3、9と四方に数字を入れ、1、2、4、5……と間を埋めてゆく。「はい、それが終わりましたら、1時45分のところに針を描いてください」。仕方がないから真面目に描いた。免許を更新したいからね。
「はい、次のページをめくってください」。マス目があって、1から16まで番号が打ってある。「先ほど見た絵を思い出して、それをひらがなでもカタカナでも漢字でも、何でもいいですから、覚えてるだけ書き込んでください」。まいったなぁ、そういうことか……。書けたのは11個だけで、残りの5個はどうしても思い出せなかった。
ただし、次のページでは「楽器」「野菜」「昆虫」というようにヒントが示されている。ここでは16個全部を思い出して書けた。
「認知機能検査」の結果が出た。100点満点中86点。76点以上は「記憶力・判断力に心配はありません」とある。日ごろから“物忘れ”には自信があるが、まだ認知症にはなっちゃいないということである。ちょっとうれしい。
こうしてやっと「高齢者講習」にたどり着く。ここでは、目の検査。といっても若者は視力検査だけだが、僕らは「動体視力」「夜間視力」「視野」を検査測定する。そして、運転シミュレーター。どういうものかというと、モニターの中の直線を走っていて、赤・青・黄がアトランダムに出てくる。青はアクセルを踏みつづけ、黄はアクセルからいったん足を離して、また踏む。赤は即座に離してブレーキを踏む。次にはモニターの中のカーブを運転する。的確にハンドルを切れるかどうか。ただし、先ほどの赤・青・黄がまた予告なしに出てくる。同時に異なる2つの課題が正確にこなせるかどうかが試されるわけだ。
それが終わると実際コースに出て、実車を運転する。S字や車庫入れなども課せられ、1人3~4周まわる。園児扱いされて不快を顔に出していた男性と「目!」「野菜!」と柔軟に対応していた女性、そして僕がたまたま同じクルマに乗った。
2人は縁石に乗り上げるし、S字は脱輪するし、車庫入れでは下がっているポールにカキンカキン当てていた。もっとも、これは試験ではなく講習の一環なので、落ちることはない。この人たち、大丈夫かなぁ……。認知症チェックも重要だが、それ以前に技能面のほうがむしろ怖い気もする。
すべての講習が終わると、先ほどの運転シミュレーターの結果が出た。「反応の速さとむら」「操作の選択と速さ」「正確なハンドル操作」「複数の課題への注意の配分」という4つの項目に対しておのおの5段階で評価される。
総合評価だけ書くと、僕は「4」だった。「操作が組み合わさった時も、ハンドル操作は適切でした」と書いてある。「当ったり前じゃないの。何十年もの間、ほとんど毎日乗ってるんだから!」とドヤ顔したいところだが、「4」は同年代の中での評価。つまり高齢者の中で見たら……という数値だ。老若男女、すべての免許取得者の中で見ると、僕は「2」だった。
講習を通して、僕は自分の立ち位置を認識した。「それも寂しいなぁ」という思いもあるにはあるけれど、「知れてよかった」という気持ちもある。「まぁ、受け入れていくべきだな」と僕は心の中でつぶやいた。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2014-03-21(00:00) :
週刊代々木忠
:
コメント 0
:
トラックバック 0
このページのトップへ
前の記事
«
ホーム
»
次の記事
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ
コメントの投稿
名前
タイトル
メールアドレス
URL
本文
パスワード
非公開コメント
管理者にだけ表示を許可する
このページのトップへ
« 前の記事
ホーム
次の記事 »
このページのトップへ
カテゴリ
週刊代々木忠 (343)
最新記事
第344回 修羅場をくぐって (03/04)
第343回 誰のために (02/26)
第342回 みにくいアヒルの子 (02/19)
第341回 虚実皮膜 (02/12)
第340回 「満たされない女」と「向き合えない男」 (02/05)
第339回 トランスとは何か? (01/29)
第338回 笑ったり、泣いたり、怒ったり (01/22)
第337回 2015年をふり返って (12/18)
第336回 SM (12/11)
第335回 幸せが生まれる場所 (12/04)
第334回 幸福のとき (11/27)
第333回 セックスレスの大きな要因 (11/20)
第332回 対話Ⅲ (11/13)
第331回 女の側の心理――そこを男は見落としている (11/06)
第330回 世界一貧しい大統領 (10/30)
第329回 深まる秋に (10/23)
第328回 総理大臣の呼吸法 (10/16)
第327回 何のためにセックスするのか? (10/09)
第326回 サイレントベビー (10/02)
第325回 真似る (09/25)
第324回 スマホ買いました… (09/18)
第323回 売買春は合法化すべきか? (09/11)
第322回 右脳セックス (09/04)
第321回 夏の疲れに (08/28)
第320回 セックス経験1回の女の子 (07/31)
第319回 いじめの根っこ (07/24)
第318回 対話Ⅱ (07/17)
第317回 動き出した若者たち (07/10)
第316回 癒着と拡張 (07/03)
第315回 水平目線 (06/12)
月別アーカイブ
2016/03 (1)
2016/02 (4)
2016/01 (2)
2015/12 (3)
2015/11 (4)
2015/10 (5)
2015/09 (4)
2015/08 (1)
2015/07 (5)
2015/06 (2)
2015/05 (5)
2015/04 (4)
2015/03 (4)
2015/02 (4)
2015/01 (3)
2014/12 (3)
2014/11 (4)
2014/10 (5)
2014/09 (4)
2014/08 (2)
2014/07 (4)
2014/06 (4)
2014/05 (5)
2014/04 (4)
2014/03 (4)
2014/02 (4)
2014/01 (3)
2013/12 (4)
2013/11 (5)
2013/10 (4)
2013/09 (4)
2013/08 (3)
2013/07 (4)
2013/06 (4)
2013/05 (5)
2013/04 (4)
2013/03 (5)
2013/02 (4)
2013/01 (3)
2012/12 (3)
2012/11 (5)
2012/10 (4)
2012/09 (4)
2012/08 (3)
2012/07 (4)
2012/06 (5)
2012/05 (4)
2012/04 (4)
2012/03 (5)
2012/02 (4)
2012/01 (3)
2011/12 (4)
2011/11 (4)
2011/10 (4)
2011/09 (5)
2011/08 (2)
2011/07 (5)
2011/06 (4)
2011/05 (4)
2011/04 (5)
2011/03 (4)
2011/02 (4)
2011/01 (3)
2010/12 (4)
2010/11 (4)
2010/10 (5)
2010/09 (4)
2010/08 (2)
2010/07 (5)
2010/06 (4)
2010/05 (4)
2010/04 (5)
2010/03 (4)
2010/02 (4)
2010/01 (3)
2009/12 (4)
2009/11 (4)
2009/10 (5)
2009/09 (4)
2009/08 (2)
2009/07 (4)
2009/06 (4)
2009/05 (5)
2009/04 (4)
2009/03 (4)
2009/02 (4)
2009/01 (5)
2008/12 (4)
QRコード