週刊代々木忠
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第137回 ミラーニューロン(2)
「ミラーニューロン」は、見たり聞いたりすることで、脳の中にシンクロを起こすことを
前回
書いた。つまり、自分の中で同じことが再現されているわけであり、本人も気づかないうちにレッスンしちゃってるのだ。
東日本大震災が起きたとき、僕はこのブログに次のような文章を載せた。
〈被災された方々だけでなく、日本国中みんな、目に見えない心の傷を負っている。人の痛みを自分の痛みと感じることは、人間としてとても大切ではあるけれど、だからこそ影響を受けやすい人は、地震報道の悲惨な映像をあまり見ないようにお願いしたい。磁場的にこういうことが起きているときは、ネガティブなものが噴き出している。自然の一部である人間も決して例外ではない。映像によって心が負う傷は想像以上に大きい〉
これを読んで「いや、悲惨な映像をあえて直視し、無事だったわれわれも、その現実を胸に刻んでおくべきだ」と思った人もいたかもしれない。確かにそれはそうなのだが、僕は映像の持つ影響力について、明確な裏づけこそなかったけれど、体験を通してずっと感じつづけていた。だから「ミラーニューロン」のメカニズムを知ったとき、ああ、そういうことだったのかと腑に落ちたのだ。
その意味では、アダルトビデオも現実の性に大きな影響を与えている。今のAVではオナニーの延長線上みたいなセックスが蔓延している。頭で妄想をかき立て、肉体の刺激で快を得る。そこには感情というものが伴っていないから、相手と本当につながることはできない。男も女も、相手の体を使ったオナニーのようなカラミ。こういう映像を見つづければ、見ている側も意識しないうちに同調してしまう。それが怖いと思う。
僕はことあるごとに「セックスは相手の目を見てしろ」と言いつづけてきた。このブログを読んでくれている人も「ああ、また始まった」と思ったかもしれない。お互いが目を見つめ合ってセックスすれば、妄想は湧かない。思考が介在しなくなり、感情が動き出す。そうして心と心がつながれば、肉体すらも溶け合う感覚を味わえるだろう。せめてその映像を見てほしいと思って、僕は作品を撮りつづけてきた。
人と人とのつながり感が希薄になると、人は疑心暗鬼になる。その不安ゆえに、さらに情報を取ろうとして悪循環に陥っていく。ものの本によれば、300年前の江戸時代の人たちが一生に得る情報量を、現代人は1日で超えてしまっているという。それじゃあ、おかしくもなるわけである。とうに許容量を超えてしまっているのだから。色や音も情報であり、人はご飯を食べたり、水を飲んだり、空気を吸うのと同じように、情報も自分の内部に取り込んでいる。誰かの意図的な情報も、ねつ造された情報も、自分が好むと好まざるとにかかわらず、受けてしまう。きっとミラーニューロンはそこにも反応しているはずである。
昔からアメリカやヨーロッパの都市部よりはヤップやサイパンにハマり、今は千葉に行って癒されて帰ってくると、このブログでも紹介したが、ノイズを含め氾濫している人工的な情報をあえて遮断し、たとえ数日間でも自然の中に身を置いて、自然のサイクルで生活してみると、それまで抱えていた悩みや問題がいつのまにか解決していることに気づく。そうなってみると、僕の体がきっとこれを求めていたんだよなぁとあらためて思うのだ。
15年前に発見されたミラーニューロンは、まだ研究のとば口に立ったところだろう。現在、脳科学者たちはその解明にしのぎを削っているに違いない。ミラーニューロンがもっとポピュラーになれば、教育方針も変わってくるはずである。先生が板書したものを生徒が書き写したりするよりは、実物を見て、追体験したほうが、はるかに多くのことを脳は吸収できるはずだから。
教育に限らず、人々の生活様式や、ひいては人間関係のありようも変わっていくのかもしれない。これは楽しみである。もう少し僕も長生きして、それを見届けられたらいいなぁと思う。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2011-09-23(00:00) :
週刊代々木忠
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