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第80回 挿入できない女〈前編〉

 久しぶりにAV女優を撮った。すでに20タイトルに出演しているという女優は栗原早記や豊丸や樹まり子たちを撮って以来20年ぶりだ。20本もビデオに出ていれば、当然ながらセックスのよさも知っているだろうとふつうは思う。

 ところが、まったく悦びを知らない。イッたこともないという。最初、プロデューサー面接の資料でそれを読んだとき、彼女がイケないのはきっと子どもの頃のトラウマだろうと思った。そして面接資料を読み進んでいくと、まさにそのとおりのことが書き込まれていた。

 撮影1日目の晩は、男優もスタッフもおらず、僕と彼女の2人きりで過ごす。AV女優を生業(なりわい)としている彼女は、監督のOKをもらうためならたぶん何でもやるだろう。しかし僕はいつもそうだが、素の姿の本気セックスを見たいし撮りたいのだ。

 手始めに催淫CDを聴かせた。このCDには以前に書いたように催眠誘導が録音されている。その中の舐められているのを体感させるところで、彼女は多少反応した。ところが、挿入されたところで動きが止まってしまう。反応が鈍いなと僕は思った。

 今回は「ようこそ催淫(アブナイ)世界へ」の撮影だが、同シリーズの過去の作品を何本か持ってきていたので、この子が欲情しそうなものを選んで見せることにした。AV女優の本気オナニーを久しぶりに撮りたいと思っていたからだ。

 じっと見入っている彼女に「欲情してるんだろう?」と訊いたら、「恥ずかしい」と言う。僕は「あ、いいねぇ。仕事だと思えば大胆な大股開きもできるけど、今は素の自分だからなぁ」と声をかけた。いい雰囲気である。

 モニターに映し出された作品が、いよいよセックスになる。すると、彼女は顔をしかめた。「どうしたの? 感じてるの?」と訊いたら、「痛い」と言う。先に催淫CDを聴いているので、多少はトランスに入っているはずだ。だからモニターの中の女の子と彼女はチャネリングしている。実際には何も入れていないのに、アソコが痛いと言い出した彼女。これじゃあ、どうにもならないなぁ......と僕は思った。

 彼女にとってセックスとは「痛い」ものだった。にもかかわらず20本もビデオを続けてきたのは「楽しかった」からである。「痛い」と「楽しい」は相容れない。ひょっとして極度のマゾなのかと思う人もいるかもしれないが、マゾは決して生まれつきのものではないはずだ。

 彼女の34年間の人生は、あまりにもつらかった。1回目の自殺はどういうクスリなら確実に死ねるかを調べ、可能なだけクスリを買い集め、それを飲んだという。しかし発見が早くて病院に運ばれ、一命を取り留めた。その後もドアノブに紐をかけて首をくくったりと、20回近く自殺を試みたものの、すべて失敗に終わった。だから、つねに彼女は死に救いを求めつつ生きてきたのだ。

 彼女の父親は酒乱で、酒が入れば「おまえなんか死んじまえ!」と言いながら彼女に暴力をふるった。そんな父親にビクビクしている母親は、彼女ではなく弟のほうを可愛がった。同じ腹を痛めた子なのに、姉弟の扱いはあまりにも違っていた。少なくとも彼女の目から見れば。

 「生まれてこなければよかった」と思っていた彼女が、ビデオに出演した。これまで自分が必要とされたことは一度としてなかったけれど、ビデオの現場は違っていた。みんなが自分に注目してくれる。彼女は生まれて初めて主役になれたのである。セックスは痛い。でもそれさえ我慢すれば、自分の居場所があった。

 彼女のその切実な思いは、次のエピソードからも伝わってくる。去年の10月、彼女は大腸がんの宣告を受けた。助かるためには手術を受けないといけない。ところが、それは内視鏡で取れる範囲ではなく、切開手術になると医者からは言われる。腹に傷があっては、もうアダルトビデオには出られなくなる。せっかく見つけた自分の居場所が、手術と引き換えになくなってしまう。そこで彼女はこう考えた。どうせもともと死のうと思ってたのだから、私は楽しいままで死のう。手術は受けない。

 入院の手続きもしない彼女に、担当医が業を煮やし彼女の実家に電話する。手術を早急に受けさせるよう、両親を説得したのだ。両親が強引に病院へ連れていこうとするので、彼女はアダルトビデオのことを打ち明けた。親子はその件で揉めたはずだが、再検査を条件にもう一度病院へ行くことになった。結果はというと、誤診なのだそうである。まったくいい加減な話だが、彼女の喜びは一入(ひとしお)だったに違いない。

 彼女は24歳で結婚し、33歳で離婚している。9年間の結婚生活も、そういう体質だからうまくいかないし、本人はダンナから愛想を尽かされたと言う。朝起きられない。家事もうまくできなかったようだ。

 話を今回の「ようこそ催淫(アブナイ)世界へ」に戻そう。僕が最初に思い描いたよりも事態はずっと深刻で、一筋縄ではいきそうにない。挿入が痛いのでは、どうしたらいいのだろう? とりあえずもう一回催淫CDを聴かせるか、呼吸をやるしかないなぁと思った。

 床にムートンを敷いて横になってもらい、呼吸法を行った。しばらく続けていると、このまま行くとひょっとしたら人格が乖離してしまうかもしれないという思いがよぎった。トランスに入ったのち、トラウマを徐々に吐き出してくれればいいが、これまで押さえ込まれていた体験意識が一気に表に出てきたとき、1人の人格として自立してしまう可能性もある。

 そうなれば、最低でも5年や6年は彼女とつきあうことになる。自分はそこまで彼女の面倒を見られるのだろうか? 彼女のネガティブな感情と長い期間寄り添えば、僕自身、やっと治った鬱にまた戻るかもしれない。......やはり無理だ。

 僕は行っていたブリージングを自然呼吸に戻して、性器呼吸をしばらく続けた。すると、ちょっと腰が動いてくる。「濡れてきたのかい?」と訊くと「わかんない」と言う。「オマンコ、さわっていい?」と訊くと「ハイ」と言う。さわってみると、彼女のそこはもうズブズブになっていた。お尻のほうまで垂れている。「オレの目を見ながら、自分から腰を使ってごらん」という僕の言葉に、彼女の腰が求めるような動きに変わった。「入れたいなぁ」と言ってみたら「入れて」と言うので、じらしながら指をゆっくり挿入する。たしかに狭い。これじゃあ男優は大変だよなぁと思った。

 しばらく指の出し入れをしていたのだが、何かの拍子でスーッと渇いてしまった。まるで瞬時というくらいの早さで。すると指が抜けない。もちろん力ずくで抜こうと思えば抜けるのだが、いままでのヌルヌルの状態で出し入れする力加減ではキュッとしたまま動かなくなった。

 こうなった原因は、彼女の中で過去の何かが反応し、拒絶が起きたのだろうが、ますますこれは厄介だなぁと思った。いったい明日の撮影はどうしたらいいのだろうか......。

                               
(つづく)



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催淫CDも彼女には効かないのか?

テーマ : 日記
ジャンル : アダルト

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