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第81回 挿入できない女〈後編〉

 撮影1日目の晩、僕はひとり布団の中で、さて、どうしたものかと考えた。

 彼女(美咲藤子)はAVの現場に居場所を見つけた。でも、きっと人間不信は変わっていないだろう。なぜなら、幼い頃からずっと愛されてこなかったのだから。父親は酒が入ると「おまえなんか死んじまえ!」と暴力をふるい、母親は弟ばかりを可愛がり、姉である彼女には「あんたなんか要らない」と言ったという。彼女の中には、今なお孤独が横たわっている。

 美咲は9年間結婚していた。プライベートの男性体験は夫ただ1人。とはいえ、結婚生活中もさほどセックスはしていない。あとは20本のビデオに出た男優たちとのセックスだけだ。仕事と割り切っているから恥ずかしさもない。しかも自分の居場所を守るために、痛みに耐えつつ気持ちよさを演じるその行為がセックスと呼べるかどうかは疑問だが。

 もともと美咲はセックスが好きなわけではないのだ。セックスが好きじゃないというのは、つまるところ人間嫌いということでもある。それがどんどん膣を小さくさせ、他者の侵入を拒絶している。

 撮影2日目の朝、新たに女の子2人と男優3人、そしてスタッフたちがやってきた。女の子の1人(滝川けいこ)は「ザ・面接」に出た子で、華やかだったし賑やかだったから、今回の作品づくりでは彼女の存在が牽引役を果たせると思って、僕のほうから出演を依頼した。もう1人(君島あさひ)はビデオ初出演。年は若いが、3年ほど銀行に勤めていた。

 男優は、佐川銀次、トニー大木、松田優作。彼らには、事前に美咲の事情を伝えておくことにした。「この子には無理にセックスをさせようとは思っていない。もしも挿入したがったら、そのときは彼女が上になって入れさせ、主導権を握らせること。でないと、オレは指1本で......」と昨晩の話も聞かせた。

 女3人、男3人がそろっての撮影は、元銀行員の君島が催淫CDを聴くところから始まる。君島のパートナーは優作。君島がビデオ初出演なのは書いたが、優作も僕の現場は初めてなので、なぜCDだけで女の子があんなにいやらしくなるのか、不思議がると同時に勃起していた。

 君島から15分遅れて、「ザ・面接」に出た滝川が上のフロアで聴きはじめる。滝川のパートナーはトニー。2人の女の子には「これを聴くと、思考が落ちて淫乱になれる。本当の自分が出せると思うよ。聴き終えて目があいたら、下着1枚で男優がそばにいるから自由にして」と言っておいた。

 ちなみに、催淫CDには約30分間、催眠誘導が録音されているが、15分の時間差を設けたのは、2組のセックスが同時に始まっても撮りづらいからである。予想どおり、聴き終えるやいなや、君島と優作はむさぼるようなセックスを始めた。

 美咲の座っている位置からは、君島と優作の生々しい結合部がよく見える。それまでずっと見ていた美咲が泣き出した。彼女には銀次をつけている。これまでの撮影同様、監督の僕が指示すれば、彼女は銀次に対して何でもやれるのだろうが、今は素の自分でいるから手も足も出ない。

 「どうしたの?」と訊いたら「私にはできない」と言う。「いいんだよ、しなくても。ビデオだからこれをやらなきゃいけないというのはないんだから。銀ちゃんのオチンチンでもさわってなよ。さわってたら落ち着くから」と僕は声をかけた。

 泣き顔ばかり撮っていても仕方ないので、ガンガンやっている君島たちを撮り、フィニッシュしたのちカメラをふったら、先ほどとは打って変わって笑顔になった美咲が、銀次のオチンチンをパンツの上からさわっていた。ちょっとさわられただけで、銀次はあえいでいる。僕がわざと「こんなコワモテの男がなっさけないねぇ」と言うと、銀次もそれに合わせてますますよがる。

 こうなると、女の子はうれしいのである。だんだん彼女が卑猥になってゆく。彼女は銀次のオチンチンを自分から咥えに行った。誰が指示したわけでもないのに、喉の奥まで突き立て、オエオエ言いながらやっている。そして手でしごきながら、彼女は銀次と見つめ合った。その姿に、終わった4人も目が離せない。「あ、いやらしい」という声が見ている側から思わず漏れる。


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 美咲は銀次を見つめ、彼の巨根を本気でしごきはじめた。銀次もあけ渡そうとしているのがファインダーをのぞいていて伝わってくる。銀次は体を震わせ、気持ちよさそうにイッた。

 間を置いて美咲に声をかける。「男って可愛いだろ?」。美咲は「カワイイ」と言って少し笑った。

 休憩をはさんで撮影後半、美咲はトニーのオチンチンを咥えることとなる。ただ、ファインダーをのぞきながら僕は、勃起していないトニーが美咲のフェラで自分を勃たせ、そののちに挿入できない美咲ではなく、別の女の子へ向かう計算のようなものが見えてしまった。

 トニーはこれまで何千というAV現場を経験してきたベテラン男優だが、抜き差しだけを見せる現場に慣れてしまった分、素の自分の感情を女の子に向けることができない。だから、また悪い癖が出たのか......と僕は心の中でつぶやいていた。

 にもかかわらず、美咲はトニーのオチンチンを美味しそうに咥えているのである。口唇性欲という言葉があるが、彼女はまさに口で感じているように見えた。咥えていることが入っているのと同じように幸せそうだ。前半の銀次との行為によって、彼女の中で何かが変化しつつあるのかもしれない。


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 そのとき、トニーが「感じていい?」と切なそうに美咲に訴えた。美咲の自虐的なイラマチオに、トニーは体を小刻みに痙攣させ、口の中に放出した。むせながらも、美咲はトニーの精液を高揚した表情で飲み込み、「あ~凄い、気持ちいい、うれしい」と言ってトニーを見た。トニーの内面にも何らかの変化が生じたことは確かだ。

 「生まれてこなければよかった」とずっと思っていた美咲。AVの現場に居場所を見つけながらも、可愛がってくれなかった父を、自分に愛想を尽かした夫を、そして男そのものを心の底では憎み、拒んでいた。

 心をともない目を見つめ合うセックスにおいて、そのあたたかみが、閉じ込めた氷の部分を溶かしてゆく。その際、挿入は必ずしも必要ではない。

テーマ : 日記
ジャンル : アダルト

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