週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第176回 AV業界の深い闇
先々月、「ビデ倫裁判」の第二審判決が東京高裁で言い渡された。結果は有罪。
以前にも書いたけれど、一方で無修正動画が野放しで流されているというのに、修正しているほうが有罪なのである。しかも、ビデ倫のモザイクが薄くなったのは、インディーズものと同レベルまで基準を緩和したためだが、インディーズ側にお咎(とが)めはない。
だれが聞いてもおかしな話だが、これがまかり通ってしまうのは、利権争いだからである。僕は、そもそもビデ倫が警察の天下りを入れたことが、ここにつながったと思っている。
かつてビデ倫の審査員は「必然性のない濡れ場は認められない」と言ってはばからなかった。そこには社会に与える影響をつねに視座として持ち、自らも性を探求しようとした者の自負があった。
だから再審ばかりか、再々審まであり、そのたびに僕は審査員とバトルになった。それはとてもエネルギーのいる作業ではあったけれど、そのおかげで自分の行き過ぎを気づかされたり、性に対して襟を正すことにもつながっていった。
アダルトビデオ業界が急成長を遂げたために、ビニ本業界をはじめ異業種の人々が雪崩(なだれ)を打って参入してきた。彼らにとって、ビデ倫審査員とのせめぎ合いなど、かったるい以外のなにものでもなかっただろう。今こういうものを出せば売れる。でも、審査がなかなか通らない。とはいえ、ビデ倫を通さずに流通させればパクられるかもしれない。
彼らは理事会社として名を連ね、自分たちの意向が通りやすい審査員を入れ、要職に警察OBの天下りを迎える。こうすれば先述の問題はどれも解決する。いや、それがビデ倫である必要すらないのだ。メーカーが自分たちで審査機関を作り、そこに警察OBを天下りさせれば、過激な商品を世に送り出し、なおかつパクられない保険ができあがる。
ずいぶん前になるが、僕のところにも知人を間に立て「ビデ倫を抜けて、今度新たに作る審査機関に加入してくれないか」というアプローチがあった。「老舗のアテナが移れば、みんな来るだろうから」と言うのである。僕は「方向が違うから、勘弁してくれ」と言って断った。
メーカーは審査機関に審査料を収める。そして審査が通ったものにはパッケージ1つ1つに「審査済み証」としてのシールを貼る。このシール代金も審査機関に収める。つまり、多くのメーカーが加入すれば、その審査機関にはそれだけカネが入るということである。
ビデ倫が摘発を受けたのは、天下りのポストである事務局長の席が、なぜか空白の期間だった。業界の中には、ビデ倫を潰すことによって、そこに加入していた多くのメーカーをある審査機関に誘導したかったという見方もある。現に審査機関はたくさん存在しているのだから。
今、過激な作品(?)が世の中に溢れている。もはやセックスではないものが、あたかもセックスのように売られているのだ。天下りを入れ、警察とズブズブの関係になっていれば、パクられる心配もないだろう。
ところが、その刺激的なものがすでに飽きられてしまっている。特に若い人たちにとって、アダルトビデオはおカネを払って見るものではない時代である。アダルトビデオに限らず、タネを蒔(ま)くことを忘れて、刈り取りだけに躍起になっていれば、いつしか何も育たなくなってしまう。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2012-07-06(00:00) :
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