週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第168回 元東電社員の証言
先月3日の「報道ステーション」(テレビ朝日)にて、元東京電力社員の木村俊雄さん(47歳)の証言が放送された。彼はかつて福島第一原発にて原子炉の運転や制御棒などの管理をしていた技術者である。番組を見た人も多いと思うが、彼の証言を何カ所か要約すると、次のようになる。
「故障原因といっても、どれがどのくらい壊れたのかさえ、まだ洗い出してはいない。格納容器のフタさえ開いていない状況で、『安全だ』『妥当だ』とよく言えるものだ」
「かつて発電所の運転日誌を書き換えることはやっていた。都合が悪いときにはコンピュータにアクセスして書き換える。でも、規制側にはわからない。技術力がないから、東京電力に手玉に取られてますよ」
「1991年10月30日に福島第一原発の1号機で海水漏洩があり、タービン建屋の地下1階にある非常用ディーゼル発電機が水没し、機能が喪失しました。『津波が来たら大変じゃないか、メルトダウンするじゃないか』と言ったら、上司は『そのとおりだ。鋭いよね』と褒めてくれました。上司は『津波を過酷事故の中に盛り込むのは、じつはタブーなんだ』と。その言葉を聞いたときに愕然としたし……そんなもんなんだと思った」
「耐震の指針も、きちんと世界の地震学の定説に合わせて造ったとすると、日本の国土に原子力発電所は造れません――それを知っているのに、知らないフリをしている。少なくとも電力会社の人間は知っているはずです」
この証言を聞いても、昨年の事故以降の東電の対応を見ていれば「寝耳に水」というよりは「さもありなん」と思えてしまう。だが、この証言が凄いのは、実際に福島第一の内部で働いていた技術者の言葉というところにある。僕はこれまでジャーナリストたちが「東電の体質」とか「原子力村の利権」について語るのを聞いても、心にドーンとは来なかった。
木村さんは、東電の体質と原発の実態に嫌気が差し、10年前に東電を辞めている。彼はそのとき現代社会に失望したのかもしれない。いま彼はエネルギーと食料の自給自足を目指し、高知県の自然の中で奥さん子どもと暮らしている。いったんは覚めた目で社会を突き放して見たものの、多くの人々に事実を伝える必要性を感じたからこそテレビに自分の姿を晒したのだろう。本名や年齢を出し、顔にボカシも入れず、音声もそのままで。
木村さんには気負いというものが見られなかった。穏やかな話しぶりにはインテリジェンスや教養もうかがえる。そして、地に足の着いた彼の生き方がそのまま伝わってくる。だから、この手の告発にありがちな私怨も、私利私欲も、彼にはいっこうに感じられなかったのだ。
ところがである。木村さんがしゃべったあと、メインキャスターの古舘伊知郎はなんのコメントもしない。僕はてっきり「この件については、今後徹底的に究明していきます」とでも言うのだろうと思っていた。あるいは解説者を入れて、証言の内容を検証しながら掘り下げていくとか……。
おりから原発再稼働が話題になっているその渦中で、木村さんの証言を東電側にぶつけて白黒をはっきりさせるのが、ジャーナリズムの使命ではないのか。運転日誌を書き換えたのなら、何をどういうふうに改ざんしたのか、なぜ突きとめようとしないのだろう。それを、証言のみ流しっぱなしで尻切れトンボでは、ますますテレビ離れが加速するに違いない。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2012-05-11(00:00) :
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