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第244回 セックスを教える場所

 少子化は日本にとって深刻な問題である。厚労省の人口動態統計によれば、昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの数)は1.41で、16年ぶりに1.4台へ回復したという。ところが、女性の全体数が減っているため、出生数自体は前年比1万3705人減の103万7101人と過去最少なのだ。

 ちなみに、第1次ベビーブーム(1947年)の合計特殊出生率は4.54、第2次ベビーブーム(1973年)が2.14。厚労省によると、人口を維持するためには出生率は2.07必要だが、高齢化で子どもを産める年齢層が減っている日本では、それを上回ったとしても人口減少は止まらないという。

 少子化は20年来の課題ゆえ、国も子育て支援の施策をいろいろと打ち出し、少子化社会対策基本法とか、次世代育成支援対策推進法といった法律まで作った。すでに子育てをしている人がこういった施策に助けられたというケースは、もちろんあるだろう。しかし、先にも書いたように少子化の歯止めにはなっていない。

 子どもを産んだあとの不安要素を軽減するだけでは、子どもは増えない。なぜなら、晩婚化や未婚化が進んでいるし、それ以前にセックスをしたいとは思わない若者たちが増えているからである。

 先日、男優の吉村卓が事務所に来たとき、まだ日程は決まってないけれど、「脱童貞化計画」というテーマの講演を知人から依頼されたと言っていた。その知人は以前に政治家秘書をしていた人で、厚労省もセックスの問題にはどこから手をつけたものか、手をこまねいている状態だそうである。僕は卓に「経験をもとに、どんどん話をするべきだよ」と言った。

 18~34歳の男性で「性体験なし」が全体の36.2%。同様に女性は38.7%(2010年、国立社会保障・人口問題研究所調べ)。今の日本には、セックスを学ぶ場所がない。このまま行けば、若者たちのセックス離れはさらに加速していくことだろう。そうなったら、恋愛も結婚も出産もいっそう遠のいてゆく。

 僕はかねてから遊郭の復活が必要だと思っている。かつてそこにいたプロの女性は、対人的感性の成熟した人が多かった。半人前でセックスがどういうものか知らない男に、女のさわり方を教え、目合(まぐわい)を教え、柔らかく温かな母性で女を教えてくれた。そうやって一人前の男に育てていくことを自らの歓びと感じている女性がたくさんいたのである。

 ところが、射精産業である今の風俗ではヌイてもらうことしかできない。男は横になったまま、手や口でヌイてもらうお手軽な射精では、とうていセックスの学びにはなり得ず、“男マグロ”を増殖させるのが関の山だ。

 新しくできる遊郭では、逆に面接軍団のようなセックスをわかっている男たちがイケない女性をオーガズムに導くことも必要になってくるかもしれない。いずれにしても、本当の意味で人間が幸せになれる制度なり施設が待ったなしで求められていると僕は思うのである。





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