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第224回 矢作直樹先生の話

 ロフトのイベントに来てくれたカウンセラーTさんの紹介で、潜在能力を研究している人たちと知り合った。そして、そこで教えてもらったある講演会に先月行ってきた。「人間サイエンスの会」というところが主催しているもので、演題は「科学をはるかに超えた現実――救急医療の現場から」。講師は「矢作直樹氏」。

 で、どんな内容なのか? 講演案内にはこんなふうに書かれている。

 〈虚心坦懐に見ていると臨床現場をはじめこの世ではいろいろなことがあります。この世の世界では限られた波長(おおよそ400nm-800nm:nmはmの10-9)のもののみが“見える”ということを理解されているはずです。テレビの映像のもとになる電波(VHFで2m、UHFで0.5m)ももちろん見えません。レントゲン写真で使うX線(0.01nm)も見えません。このように身の回りに見えなくても存在していると認識されているものがたくさんあります〉

 テレビ電波のように波長の長いものも、逆にX線のように短いものも、ともに人間の目には見えず、見えるのはその間の、それもとても狭い幅の中だけということだろう。冒頭に〈虚心坦懐に〉とあるが、僕たちは視覚をはじめ五感で感じ取れるものだけが存在しているとついつい思いがちである。

 〈さて、医療現場では、私たちの予測と異なって明らかに助かって社会復帰することが無理と思われた症例が無事だったり、その逆だったりすることがしばしば起こります。また医療現場や身の回りでは憑依のような霊障を経験します。このような事例は、交霊によりこの憑依をはずす(浄霊)と、もとにもどることも経験します。こうした経験と先人の教えから私たちのからだは目に見える体とその働きによる心のほかに、目に見えない意識体としての霊魂があることがわかります〉

 霊障(れいしょう)とは霊的な原因で起こる災いをいう。もう少し具体的に言うなら、肉体的あるいは精神的な病や、事故、人間関係の不和、異常行動などが起こるとされている。まぁ、それはともかく、講演案内には、憑依(ひょうい)、交霊、浄霊、霊魂という言葉が続く。これが霊能者の講演ならば違和感はないかわりに、今さら聴きに行きたいと僕は思わなかっただろう。

 ところが、講師の矢作氏は東京大学医学部教授だという。だからこそ、僕は話が聴きたいと思ったのだ。ただし正直に書くと、霊を語るくらいだからきっと東大の中では異端というか、はみ出しもんというか、決して主流ではないんだろうとも思った。いや、べつに主流でなくてもぜんぜんかまわないのだが……。

 しかし実際は、異端どころか、中枢も中枢、将来は東大医学部のトップに立つような人だったのだ。今の肩書きは「東京大学大学院医学系研究科・救急医学分野教授」にして「東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部部長」。救急部・集中治療部といえば、まさに命の砦(とりで)のような場所である。

 現職に就いた2年後の2003年には、いち早く東大病院内に「コードブルー」システムを構築している。なぜ院内なのか? 東京ドームのグラウンド9つ分の敷地には、患者、職員、見舞客を合わせると、約1万人の人々がいる。外来の救急患者に対するシステムはあっても、院内で突然倒れた場合、そこが病院であるにもかかわらず、処置が遅れて亡くなる人がいたのだそうだ。「コードブルー」の構築によって、今では異変に気づいた人の通報から5分以内に院内のどこへでも救急対応チームが出動し、高度救命処置を短時間で実施できるという。

 以上はほんの一例だが、現代医療の最先端で日夜活躍し、たくさんの人の命と向き合ってきた矢作先生が語る「科学をはるかに超えた現実」とはいったい何なのか? 詳しくは次回で。




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