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第2回 AV監督、受難の時代

 むかし、女の子がアダルトビデオに出演するというのは、大変なことだった。人前で裸になり、知らない男とセックスをし、それを映像に撮られ、不特定多数の人に見られてしまうのだから。

 彼女たちの内部には、ビデオカメラの前で男優とセックスすることに対して、もちろん抵抗があったはずである。ただし、抵抗だけならば撮影現場には来ないわけで、抵抗と相反して、女としての快楽を味わいたいという欲求も同時に持ち合わせていた。たとえお金が最大の出演動機であったとしても、である。

 だから、「こんなことしちゃいけない」というブレーキと「でも感じちゃう」というアクセルが同じ女性の中で働き、まさにその葛藤にこそ、僕はずっと女の色っぽさを感じつづけてきた。

 ところがである。今の女の子たちには、そもそもこの葛藤自体が存在しない。アダルトに出るのも「ほんのバイト感覚」「わりのいい仕事」と思っている子が多い。でも、それじゃあ、僕は商売にならない。なぜなら、そんな彼女たちが繰り広げるのは単なるカラミであって、見ている人は勃起すらしないだろう。

 いやらしくないアダルトビデオなんて、どこかの国の総理大臣と同じくらい存在価値がない。だから監督である僕は、政治は無理だが、自分の撮るアダルトビデオのほうは、なんとかしなきゃならないのである。

 僕は事前に彼女たちといろいろな話をする。

 「セックスは快楽しかないでしょ!」と言う女の子たちがいる。確かにセックスに「快楽はある」けれど、それは「快楽しかない」のではない。僕には、彼女たちが実はセックスに失望しているのがわかる。セックスとは、こんなもんだと決めつけている。きっと悪い男と当たったのだろうが、彼女たちにも原因の一端が垣間見えるのだ。

 どうしたら、彼女たちがビデオにおいて、本気で腰を使って、本気でオチンチンにむしゃぶりついてくれるのか? 女の子にいいセックスを体験させる方法はいくつかあるけれど、今回は基本中の基本をご紹介する。

 セックスを意味する言葉で、「まぐわう」という表現がある。漢字では「目合う」と書く。「まぐわう」とは、もともと「目と目を合わせて心が通じること」という意味だ。実はセックスの奥義もここにある。

 目を閉じてセックスをすると、往々にして違う人を想像しながらということも起こりうる。目の前の相手が存在してしない状態。これでは、相手の体を使ってオナニーしているようなものである。

 実際、事前の面接で「セックスするとき、相手の目を見てしてるかい?」と訊くと、「え? 目、あけちゃうの? 目をあけたらさめちゃう!」などと答える子が少なからずいる。僕は「さめなきゃダメないんだよ、妄想からは。さめて、ちゃんと相手とつながらないと」と言う。

 以前は、目を見ないでいると「あんた、誰としてんの? ちゃんとあたし見てしてよ」って言える女の子がいたものだ。

 目を見つめ合うと、お互い目の前の人しかいなくなり、相手が次第に愛おしくなってくる。快楽だけを追い求めて相手が上手いとか下手とか分析しようとする意識も消えるのである。現場でいえば、その日はじめて会った男優と瞬間恋愛にも陥る。相手を愛おしいと思う、そのときめきがなければ、オーガズムは起きない。

 あなたにも、ぜひ目を見るセックスを実践していただきたい。きっと何かが変わるはずだから......。



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セックスは、肉体だけでするものではない。

テーマ : 日記
ジャンル : アダルト

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