週刊代々木忠
いまこの瞬間の代々木忠の想いが綴られる
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第41回 娘の失恋
催淫CDを聴いたときの女の子の反応は、おおよそ3つに分かれる。
1つ目は、最後まで冷静な子。こういう子は、社会性がしっかりしている。絶対に社会で足を踏み外すことはないのだろうなぁと僕は思う。ただし、セックスのときはつまらないだろうなぁとも。実際、何が起きても自制心が働くから、現場で切り崩していくのがいちばん大変なタイプである。
2つ目は、聴いていて寝てしまう子。その子が単に睡眠不足だったり、疲れているという場合もある。催眠というのは、覚醒と睡眠のちょうど中間に位置しているので、紙一重で睡眠に入ってしまう。寝てしまう子のなかにはトラウマを持っている子もいる。セックスに何らかの抵抗がある場合、逃避として睡眠のほうに行ってしまう。
3つ目は、催淫CDで感じる子。いきなり潮を吹き、イッてしまう子もいる。僕はこういう子が催眠から覚めたとき、必ずこう訊く。「今、イメージの中で誰とエッチしてたの?」と。いちばん多い回答は「元彼」である。「まだエッチしてないんだけど好きで好きでしょうがない人」と答える子もいる。それにひきかえ、「ダンナ」とか「今彼」と答える子はきわめて少ない。
つまり、「今」のパートナーではなく、「過去」や「未来」の相手をイメージしている。その場合は、やはりどこかで別れようと思っているのである。
話は飛ぶが、僕には娘がふたりいる。上が31歳、下が27歳。今回は下の娘の話である。彼女には高校時代から8年間つきあっていた彼がいた。たぶん結婚するんだろうなぁと思っていた、その彼と別れたのは、今から4年前のことだった。
娘が別れた理由は、嫌いになったというよりも、彼の家がある宗教の熱心な信者だったことによる。同じ宗派をめぐって、僕は実の妹ともつきあいを断っているくらいだから、娘も「お父さんの性格だと向こうの家とうまくいかない」という思いがあったのかもしれないし、あるいは自分自身が受け入れられなかったのかもしれない。
別れたあと、娘は僕の部屋にやってきて泣いた。そのとき僕が娘にしてやれたことと言えば、彼女をやさしくハグしてやることだけだった。
そんな娘もどうにか立ち直って、新しい彼ができた。前の彼と別れて1年ほど経った頃だったから、その恋愛もかれこれ3年になる。「来年には結婚しようと思うから、お父さん、式には出てくれるよね?」と言うので「なに言ってるんだよ。当たり前だろ!」と笑ってから、まだ何カ月も経っていない。
ところが先月のこと、娘は家に帰ってくるなり、「もう頭に来た! 別れる!」と言う。ケンカしたんだなと思った。でも1週間か10日もすれば仲直りするだろうとも。
彼はわが家の近くに引っ越してきていた。そこにほとんど同棲のような形で、娘は自分の身のまわりの物を持って行っていた。それも全部引き揚げてきてしまったのを見て、これは本気だなぁと僕は思い直した。結局、そのまま娘は本当に別れてしまったのだった。
女房はいろいろ相談に乗っているようだった。友達と電話して、友達から慰められて、電話口でわんわん泣いているのを目にして、ああ、感情を吐き出せているからいいなぁと、僕は黙って見守っていた。
こういう場合、男親は自分から切り出してどうのこうのとは、なかなか言いづらい。僕は恋愛のことにはふれず、「お父さんが通っているジムに、たまには一緒に泳ぎに行こうよ」と誘ってみた。「いいよ」と娘はついてきた。
日曜の空いている夕方をねらって出かけた。ウォーキングマシーンやエアロバイクで汗を流し、プールで泳いだのち、出る時間を決めてそれぞれ温泉につかる。出る頃には夜になっているが、星の見えるカフェテラスで、ふたりでお茶をした。ここでも恋の話はあえて聞かなかったけれど、いろいろ話ができた。下の娘はお母さん子だったから、思えばこうして親子ふたりでどこかに出かけた記憶というものがない。
今回別れた彼は、正月、わが家に来てみんなで一緒に食事をしていた。娘も彼の実家にお邪魔して、お父さん・お母さんと会っていた。お母さんが手芸で作ったブックカバーや財布をいただいたり、向こうのご両親からも気に入られている様子だった。結婚まで考えていた娘が、突然なぜ別れてしまうのか、正直いって僕には不思議だったのである。
だが、娘とゆっくり話しているうちに、おそらくこういうことなんじゃないかという思いが湧いてきた。娘が「頭に来た」原因というのは、彼の浮気である。この浮気を、娘は許せないと言う。確かに浮気はひとつのきっかけになったかもしれないが、娘はやはり8年つきあった元彼のほうが好きだったんだろうなぁと僕は思った。
彼は表の意識では気づかなくとも、娘が元彼を心のどこかで引きずっているのを感じ取り、その寂しさや空しさから、つい他の女性に行ってしまったのではないだろうか。
たとえつらい経験だったとしても、人はそこから何かを学んでいくしかない。現在、娘は友達と母親からの助けも借りつつ、自分の気持ちに整理をつけているように見える。僕とのジム・デートも、今のところ毎週日曜続いている。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目のほうが、娘は積極的になり、主導権を握るようになった。
「お父さん! ウォーキングマシーン、あと30分行こう!」
僕は娘の笑顔に胸をなで下ろしつつ、「あと30分かぁ......」と内心苦笑する。
テーマ :
日記
ジャンル :
アダルト
2009-09-25(11:59) :
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